内容説明
「工人招募」の貼紙に応募してきた吃音の大男が、周囲から愚弄されながらも勇者として認められるまでを描いた1944年芥川賞受賞作「劉広福(リュウカンフウ)」、苦界に生きる女性とのかかわりに“私”の心の彷徨を重ねた戦後の代表作「私のソーニャ」、異母兄との交流を綴った読売文学賞受賞作「風祭」、ほかに文学に纒わる随想など八木義徳の代表的作品を一冊にまとめた名作選。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あじ
31
女が男を焚き付ける、煽る、拒絶する…「イヤ!」。サディストの性を目覚めさせた符号。八木の“S”はソーニャの“S”─純文学のSシリーズ。独善的なタイトルが辛い。◆芥川賞受賞作「劉廣福(りゅうかんふく)」他収録2018/09/02
Junko
14
「私のソーニャ/風祭」の中には4作品が入っている。 「劉広福(リュウカンフウ)」を読んだ。 満州で働いた経験から書かれた小説。満州で出会った、純朴で誠実な青年を描いている。読後感が爽やか。1944年に書かれた小説としては読みやすかった。 第19回芥川龍之介賞を受賞。2021/09/10
donut
8
「私のソーニャ」の冒頭、「時間の進行に律動と変化と装飾をあたえてくれる」愛人や友人を持たない孤独な独身者である主人公が、終戦後の再建されつつある港で時の経つのも意識せずにふらふらと過ごす場面は、電気に関する比喩表現を使った独特の風景描写や、主人公の悪戯っぽい行動(他人のポンポン・ルージュに触ったり)のせいか浮遊感があって良かった。なんとなく「檸檬」を思い出したり。「私の文学抄」や解説を読み、八木義徳の壮絶な人生について知った上で読み直すとまた印象が変わる。他の著作も読んでみようと思います。2020/10/10
はにわんこ
1
劉かんふうが、1番良かった。 もっといろいろ読みたくなった。2021/02/20
天城春香
1
感性が敏感で羨ましいです。あと私小説なのにオチを探してしまう私のエンタメ小説に毒された脳が。2012/10/14