内容説明
かつてインドシナの地にアンコールワットやアンコールトムを造営し繁栄を誇ったクメールの王国―“王道”とはそこに存在した道路である。巨万の富を求めて密林の奥深く古寺院を探して分け入るクロードとペルケン。悪疫、瘴気、そして原住民の襲撃。マルロー自身の若き日のインドシナ体験を基に、人間存在と行為の矛盾を追求した不朽の冒険小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
140
アンコールワット遺跡群旅行の伴に。9世紀から14世紀末位までカンボジアを中心に繁栄を誇ったクメール王国の寺へのかつての王道を、密林を分け入り石像や壁画を見出し盗み出そうと企てる、タイに自分の土地を築いたデンマーク人と若いフランス人。奥地への旅は『闇の奥』を彷彿させる。ベルケンの生き方は、決して充たされることのない渇望の追求。それは危険を伴う冒険であり、女性への所有欲を伴わない欲望。今回は、カンボジアの人達が仏像などの盗難に心を痛めているのを間近で見たため、彼らの哲学よりも遺産を荒らす姿に激しく動揺した 2018/01/07
みっぴー
49
タイトルの『王道』とは、9C~15Cにクメール王国(今のカンボジア)に存在した道路です。一応冒険小説とジャンル分けされているようですが、この味は還暦を過ぎた頃かもしくはそれ以降でなければ味わえないような得体の知れない何かが潜んでいます。冒険を通して〝人間はいかに死ぬべきか〟という哲学的な問を読者に発しているように感じましたが、このシグナルに応じるのには、まだまだ時間も経験も不足。人生の経験値を積んでから再チャレンジしたい作品です。2016/07/15
ドン•マルロー
11
マルローはやはり良い。2018/06/09
メルコ
10
仏領インドシナにおいて寺院の彫刻を盗むために奥地へと旅する男たちを追った物語。著者マルロー自身が1920年代にインドシナの密林のクレメール遺跡を撓屈したという。しかし当時将来を嘱望された若き作家であったマルローは、ジイドやモーリアックらに擁護され、のちに知識人、政治家への道を歩んでいく。はじめのうちコンラッドの「闇の奥」も頭に浮かんだが、冒険小説というよりとても内省的であった。半年前に途中で挫折したのを、いまになって続きを読んでいった。2024/03/05
おとん707
9
マルローが若い頃カンボジアで遺跡の石像持出し容疑で逮捕された事実からそれを題材にした冒険譚かと思ったら違った。遺跡盗掘の話はあるがそれは舞台装置に過ぎない。では植民地政策の告発あるいは擁護かというとそれも違う。結局は熱帯林の中で傷が悪化し死に近づくペルケンの死への期待と敗北感を同行の探検家クロード(著者自身か)が空しく受け止め、自分が生きる意味を自らに問うたということか。難解。装飾過剰な文のわりに登場人物の情報が少ない。ふと思ったが三島由紀夫は癩王のテラスを書く際に瀕死のペルケンが心に浮かんだだろうか。2024/01/17