講談社文芸文庫<br> 絶望の書・ですぺら

講談社文芸文庫
絶望の書・ですぺら

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  • サイズ 文庫判/ページ数 279p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784061976764
  • NDC分類 914.6
  • Cコード C0195

内容説明

幼時にキリスト教を信仰し、のちダダイストとして登場、自由を求めて絶望を知り、伊藤野枝と結婚し数年で離婚、尺八を吹き各地を流浪の末、巷間に窮死した辻潤(1884―1944)。後年大杉栄の元に行った野枝との回想「ふもれすく」を始め、著作集『浮浪漫語』『ですぺら』『絶望の書』等と未収録エッセイより、小説「三ちゃん」を含む二十五篇で構成。詩人の魂を持つこの無類の思想家の現代的魅力を伝える。

目次

一滴の水
浮浪漫語
自分だけの世界
「自由」という言葉
価値の転倒
三ちゃん 小説
ですぺら
ダダの話
ぷろむなあど・さんちまんたる
ふもれすく〔ほか〕

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

傘緑

44
時々無性に笑いたくなる。そんな時はこの本を取り出して、年譜を読む。例えば「二月、潤が天狗になって屋根から飛んだ(「妄想して屋根から跳んだ」ではない)という噂が広がり、新聞のゴシップ記事になる…七月、『天狗になった頃の話』を連載」、あるいは「八月、猿股一つで往来を歩いているところを目黒署に保護され、慈雲堂病院に入院」、まだまだ「五月、一(息子)方に同居。また大森警察署に保護されたりもする」、それから「十一月、尺八の門付けをして歩いているうちに錯乱状態となり、滝之川警察署に保護される」ふもれすくなですぺら辻潤2016/12/16

tomo*tin

22
野溝「山梔」の解説で矢川澄子が詩人・辻潤について触れていて、そういえば積んであったなと探して読んで唖然となる。まさかリアルな日本にこんな奇人がいらっしゃったとは。酒好き女好きの死にたがりの自分好き。屋根から飛び降りてみたり尺八吹いて放浪したりフランスに逃亡して「大菩薩峠」を読み耽ったり留置所にぶちこまれたり精神病院に強制入院させられたあげく孤独死である。しかも餓死。しかしエッセイの内容はただ陰鬱なだけではなく、とにかく言葉が鋭い。しかも時々笑える。恐るべしダダイスト。2009/06/08

りー

14
「新吉がとうとう発狂した。恐らく彼は彼自身のダダを完成させたのかもしれない」完成させると正気で生きて行くことはできないのがダダなのだそうだ。意味がわからない。しかし理解を拒むのもまた立派なダダの顕れなわけであって、そういった有象無象のアンチ的な思想が蠢く、ひねくれモノをこじらせた様なイメージが僕のダダ観である。本書は日本が誇るダダイスト辻潤のエッセイ集。己の悪いところを社会のせいにし、奇人狂人と呼ばれる振る舞いをしぶしぶと為し、そして一人餓えて死ぬ。まさにダダな生き様を貫いた人と言えよう。2013/07/29

澤水月

8
大杉栄のもとに走り大震災時に虐殺された妻伊藤野枝のことを大震災からたった2か月後に書いた「ふもれすく」に衝撃。韜晦的に読者を翻弄するいつもの文体が陰を潜め「野枝さん」との徒然を書く。“野枝の元夫”と一生言われ続ける事の嫌悪も含め「しかし僕は野枝さんが好きだった」「周囲の状態がどうにかなッていたらあの時のぼくらはつまらぬ感情を乱費せずに済んだのであろう」とは何と率直なことか! 徹底して枠組、束縛を厭い放浪を続け人嫌いなのに人好きのする人生と文学は現代の中原昌也に受け継がれているようにも思った2011/06/11

コノヒト

7
天狗となって空を飛び、尺八を吹いては門付けをして歩いたという著者。世を拗ねた余計者意識。冷笑的な警句の数々。青春の頃に読んでいたら、身震いするほどに憧れて、激しく心に突き刺さっていたに違いない。今でも「カッコええな。こんなん好きやな」と思える感性は残っている。そして「思える感性は残っている」と自己分析できるくらいの距離を保ちながら読んでいた。歳月を重ねたということだ。2015/09/07

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