内容説明
しっかり者の新地の芸者蝶子は若旦那柳吉と駆落して所帯を持ち、甲斐性なしの夫を支えて奮闘する―大阪の庶民の人情を自在な語り口で描いて新進作家の地位を確立した「夫婦善哉」のほか、「放浪」「勧善懲悪」「六白金星」「アド・バルーン」、評論「可能性の文学」。作家生活僅か七年、裏町人生のニュアンスに富んだ諸相を書き続けて急逝した織田作之助の代表作六篇を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
44
5編の小説と1編の評論からなる短編集。落語のような空気があるせいかスルスル世界に入っていけます。裏町のニュアンスを書いてきた作家だと思わずにはいられません。2024/02/15
けいた@読書中はお静かに
34
大阪の法善寺を訪れて興味を持った作品。妻が働き、夫が無職で散財。まわりから見ても早く別れればいいのにと思う夫婦は今でもいますよね。『一人より夫婦の方が良えいうことでっしゃろ』という言葉が好き。夫婦の絆は脆いようで強いですね。2015/12/27
マサキ
5
再読。夫婦善哉以外はあまり覚えておらず、ほぼ初読のようなもの。以前に読んだ時よりも数段よかった。固有名詞の連発に垣間見える心情。わずかな描写に数倍の感情が乗っかってくる。「マダム、今夜はスキ焼きでっか」がいつまでも心を離れない。再読ながら、大阪の方言も多いから調べながら。リズムは半減するだろうから、再再読か。2020/10/29
へこきむし
5
NHKのドラマでやっているので原作を読んだ。昔、京都にリラ亭という飲み屋があり、そこのマスターと文学者談義になったとき、第一に推されたのが織田作。なぜかよくわからなかったのが、この歳になって合点がいく。 蝶子は男にとって都合のいい女。あまり世話をやき過ぎると男がダメになっていく。私の亡くなった女房も蝶子のような気質と気立てだった。だから、この小説を読み亡き妻を忍ぶ。2013/08/31
とまと
5
ドラマが楽しみ。2013/08/24