内容説明
銀行家バルストロウドの旧悪を知るラッフルズの不審な死に医師リドゲイトもかかわっていたらしいという噂に、ミドルマーチ中が大騒ぎとなるなか、ドロシアは慕い続けてきたウィルと再婚して、物語は大団円を迎える。イングランド中部の商業都市ミドルマーチを舞台に多彩な人間模様を描き出した、ヴィクトリア朝を代表する女流作家ジョージ・エリオットの代表作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
56
この話は、読者が主人公のドロシアに共感できるかどうかで感想が大きく分かれるのではないかと思う。『フロス河の水車場』のマギーもそうだったが、私はどうもこの作者が描く「近代的思考を持った」女性たちに共感が持てない。ドロシアもロザモンドも苦い経験の後に幸せをつかみ、その人生経験こそが貴重だったのだと言われればそうなのかもしれないが、彼女たちの生き方はあまりにも騒々しすぎる。同じように他人を巻き込む恋愛でも、フレッドとメアリーのカップルの方がよほど好ましかった。当時の市民生活は、かなりリアルに書き込まれている。2017/02/25
amanon
7
微妙に絡み合い、時に距離を置く三組のカップル。そこに当時の世相を絡めつつ、ほぼ破綻なく物語を締めくくる著者の手腕に改めて感服。この当時ここまで俯瞰的な視野を持って、小説を書ける女性がどれだけいただろう?とふと思ってしまう。個人的に一番気になっていたフレッドとメアリーのエピソードがかなり少なめなのが、ちょっと残念だが、どのカップルも概ね幸せな顛末なのでほぼ安心。また、人種差別や偏見、ゴシップに流されやすい傾向などは今日にも十分通じるもの。特にウィルとジェイムス卿との距離感と確執は本作の隠し味の一つかも。2020/04/13
ロピケ
7
5年間ずっと読みたいと思っていた幻の本(私にとって)。ジェーン・オースティンがよく狭い世界の文学と言われるのに対して、時代が下っているせいもあるだろうけど、ジョージ・エリオットの作品の世界は同じ女性作家ではあっても、ぐっと広いようだ。ドロシアとウィルなど登場人物の恋愛を軸にしたストーリーも面白かったが、リドゲイドの結婚生活を書いているところも自分としては身につまされた。(リドゲイドの)「妻の性質は否定的で、それに比例して柔軟性がないのだから、彼はまるでペンチで挟まれたように、動きがとれなかった。」という場2009/11/24
きりぱい
7
もっと早くに出会っていれば、と恋愛での無意味なことを思いながら、4巻とじらされたからこそ感涙の大団円を迎えられる。ただ、誰を追えばいいのか移り変わる主役、脇キャラ共々個々の人物描写は見事なのに、いきいきとした魅力には薄く、巧みな皮肉も明るい滑稽さに欠ける。それは悪いことではないが、この辺り舞台設定は似ているのにオースティン作品とは対照的。それにしても結婚生活での心情はリアル。「完全に自分のほうが正しいと思っている時に、論争が冷淡に回避されるのは、夫婦間では学問上の論争の場合以上に癪にさわるものである」2009/07/01
ジェミーマイン
4
一文字一文字噛み締めて読むことにより、奥から奥から深い味わいが溢れ出てくるような素晴らしい作品です。物語の中に自分の弱さを見出し、その救いも見出すことができました。光文社からも新たに発刊されているので、それも読もうと思います。ドロシアの内面と行動はぜひ見習いたいものです。生涯手元に置いておきたい本。2019/10/19