内容説明
ヨーロッパ文学から離れて、土着派のマーク・トウェインなどと併せて、アメリカ文学として独立した画期的作品。後走者のヘミングウエイ、フォークナーなどに多大な影響を与えた。オハイオ州ワインズバーグ・オハイオという町を設定して、そこに住む人々の生活、精神の内面を描き、現代人の孤独や不安といった現代文学の主要テーマをアメリカ的背景のもとにとりこんだ。全体は22篇の短篇で構成。
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本屋のカガヤの本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
137
陽気でおおらかな国、というイメージを日本人の多くはアメリカについて持っていると思うのだが、田舎町が舞台の小説を読むと、むしろ息詰まるような気持ちになることがある。例えば、『余所者』に対する時、それはアメリカの方がむしろ厳しいのではないかと思える。この小説はそのひとつだ。誰もが持つ、少し変わったところに焦点を当てて描く。コミュニティとして見た時にある均質性と違うところを、敢えて執拗に描き出したらこうなるのか。それを短編によって様々な人にフォーカスしていくのは一種の芸だが、あえて読みたくなるものでもない。 2018/02/12
藤月はな(灯れ松明の火)
93
マッカラーズの『悲しき酒場の唄』のとある読書人さんの感想でグロテスクを描いた小説家でフラナリー・オコナーと並んでいたシャーウッド・アンダーソンに興味を持ち、代表作を読んでみました。グロテスクな小説は普通に見せかけて読者が共感性を拒んでしまう魅力度0の登場人物が多いという。それは私達が持っている俗物さ、どこか異常な執着心(例え、それが愛や思想であれ)、それ故に背けたい醜さがあるからだ。この小説はオコナーと比べると毒っ気が少なめ。そして自分が信じられない私からすると歪みながらも真摯な彼らにホッとする所もある。2017/09/25
こばまり
60
小さな村に住む人々の屈託に大いに気が滅入る。生々しさ、普遍性に溜息が漏れる。人間という生き物は斯くもくよくよと思い煩い、短い生涯を終えるのか。岩波「20世紀アメリカ短篇集」に収録の凄味ある作品「手」はこの一章と知る。 2018/04/15
miyu
54
とても良かった。私好みの作品。以前読んだエリザベス・ストラウト「オリーヴ・キタリッジの生活」のように一人の狂言回し的人物ジョージ・ウィラード君が出てくる。小さそうな町の話だから彼だけじゃなく他の人物もあちこちの話にそれとなく登場。最初は「だれだっけ?」と思ったが段々とまるで自分の町の話のような気になってきた。要するに誰でもどんな物語でも語られることは僅かな側面であり、本当は話されないことにこそ大事な意味があるのだと思う。それを話すのが小説だろう?と言われると見も蓋もないが私は読みながら想像する方が好きだ。2015/10/31
スミス市松
30
道の途中できらきら輝く「真実」に魅了され、己が魂に組み込んだゆえに化け物となってしまった人々の物語。他人には決して見せることのない、度し難い歪んだ「真実」を抱える彼らの内面が衒いない文体で生々しく叙述されていく。むきだしになったそのグロテスクから、しかし私は目を背けることができなかった。その理由を説明する必要はあるまい。そんな友人たちのことを忘れることはできまい。――「人は人生のむなしさを思って身ぶるいする。が、同時に、もしその町の人びとが自分の仲間であれば、涙が出るほど人生を愛しいものに思えてくるのだ」2015/02/02
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