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出版社内容情報
【内容紹介】
一夜にして人間の評価が変るのが乱世の慣い。尊氏が“筑紫隠れ”の朝、新田義貞は、凱旋将軍として、堂上の歓呼をあびていた。左近衛ノ中将の栄誉、それのみでなく、後醍醐の寵姫・勾当の内侍を賜ったのだ。それにひきかえ、貴顕に生命乞いする佐々木道誉の鵺(ぬえ)ぶり。また、朝敵たる汚名は逃れたものの、尾羽打ち枯らした尊氏。しかし彼は、北九州に勢力を養い、反攻を意図する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
chantal(シャンタール)
86
正成、ついに倒れる!この太平記はもちろん尊氏が主人公ではあるのだろうけど、正成も主役の一人で、吉川さんは正成が大好きなんだろうと思う。これほど忠誠を尽くし、戦上手でもあった正成を重用しなかった事だけを見ても、後醍醐が大した人物でないことはわかる。この壮大な物語がどう結末を迎えるのか、来月、ついに最終巻!2019/07/01
Willie the Wildcat
73
近江・道誉、九州・義長が東西の壁。官軍の行路を阻む赤松等+乱破。再起への怒涛の道程における、長門での尊氏の”間”が印象的。一方、静かに心底を語る正成。前者からは妙恵の遺書を読み上げる場面と、義兄・英時邸跡で手を合わせる場面。後者からは、右馬助と正行に語る2つの場面。明石で遂に対峙した両雄。頭に描く戦略を形にできない中での必死覚悟の正成。義貞と最後の最後で心を通わすことができたことが、唯一の救いだったかもしれない。少なからず創作が盛り込まれているは承知の上でも、男気がいいな。2022/02/12
優希
67
一晩のみで人の評価が変わるような時代になったのですね。立場は次々と入れ替わるのが怖いところです。尊氏が九州まで都落ちしていたとは驚きです。後醍醐天皇、楠木正成、新田義貞の関係も複雑で興味が尽きません。読みどころが多いとでも言いましょうか。次が最終巻。いかなる幕引きになることでしょう。2019/01/17
ケロリーヌ@ベルばら同盟
54
建武の新政の凋落。武士を軽んじ、民を置き去りにする貴顕主導の政は、燻る火種を燃え上がらせ、再び都は焦土と化す。尊氏は九州に落ち、勝ちに奢る廷臣の中、一人、同胞相剋の悲泣を御簾の内へ訴えるも狂人との誹りを受ける楠木正成の献身が哀しい。電光石火、九州勢を率い、攻め上る尊氏との決戦に死を覚悟の出陣。僅かに数えの十五歳、嫡子多門丸正行との『桜井の子別れ』には涙を禁じ得ない。歴史に「if」は許されないが、尊氏と正成、戦の無益さと、民への慈愛を知る両雄が手を携え、公武合体の世を築く様を見たかった。2019/12/07
再び読書
39
正成の苦悩と尊氏の巻き返しがメイン、最後に決戦の序盤が開始される。義貞に意見を言うと無視されて、後醍醐に意見されても、まともに相手にされない正成、道誉に喉元を握られた尊氏だが、九州で次第に力をつけていく。それと対比して、義貞の求心力は次第に薄れていく。尊氏は水軍を武器に、兵庫から上陸していく。これから最終巻に進むむ。2021/10/31