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出版社内容情報
【内容紹介】
平治の乱の実際の戦闘は、わずか半日だった。だが、この半日を境に源平の明暗は大きく分れる。源氏一門の棟梁義朝は、都を落ちてゆく途中で非業の最期を遂げ、その子義平、頼朝は勿論、常盤(ときわ)に抱かれた乳のみ児の牛若まで、業苦の十字架を背負って生きる。一方、宿敵の源氏を軍馬で蹂躙(じゅうりん)した清盛は、もはや公卿の頤使(いし)には甘んじていなかった。平家全盛の鐘は、高らかに鳴りはじめている――。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
95
鴨川より東側が舞台になることが多く、自分の今までの認識を改める。清盛がなぜ常盤御前に…というのがこれまでよく考える疑問だったが(これまでの最大の疑問)、自分のライバルが大切にしていた女性というのは気になるのかもしれないな。そうすると、吉川英治が描いてきたスケベ心のある清盛がすとんと腑に落ちる2022/12/14
ずっきん
50
『常盤木の巻』 保元、平治の乱と続いて胸中えぐられっぱなしの体力勝負の前巻から一転、ほっと一息、恋の巻である。四十初惑と揶揄される清盛の常磐への恋慕。死んでなお揺るがぬ存在の義朝。麻鳥を巡る少女たち。無理を通した二条の多子への想いは、後白河との溝を拡げる不穏な気配をかもす。当時の思想、風俗を抒情たっぷりに読ませてもらった。とはいえ、足下では盛者必衰の流れがすでにうねりだす。哀しい。福原(神戸)の築港に着手する清盛は、武将というより夢に向かう執政者だなあ。その野心と情にもろい愛嬌にやられる。2018/11/25
ちゃいろ子
49
平治の乱のあと、雪の山を落ち延びていく源氏が悲しい。父義朝たちからはぐれたことで逆に命が助かり、やがて平家を滅ぼすことになる頼朝、、。あの時源氏の御曹司たちを全て殺しておけば平家も滅ぼされることもなかったのにと歴史家たちは言うが、そうではないのでは?とする吉川氏の言葉が良い。 悪源太義平、頼朝、そして常盤御前。 文覚、朱鼻、麻鳥と、それぞれの登場人物が生き生きと描かれ、とても魅力的である。 清盛が宋との貿易の為に広大な港の計画をたてたり、厳島神社の構想を練るところがワクワクした。 2021/03/22
みやび
42
平治の乱で敗れた源氏の運命が悲しい。池禅尼の慈悲により命を救われた頼朝や義経らの行く末は知っているものの、あまり詳しくなかった父義朝の末路を知った事で、余計にその悲惨さを感じることが出来た。悪源太義平の非業の死も辛い。そして常盤御前。密かに生き延びて彼女の命を狙った金王丸とのシーンが切なくも仄かな救いだった。けれどこの、生かされた頼朝ら源氏の残党によって、後に平家は滅ぼされる。それを知っているだけに、勝者となり厳島で壮大な構想を意気揚々と語る清盛の姿が華々しくも、どこか悲哀を誘う。2021/05/20
金吾
39
平治の乱も終わり戦いにも一段落がつき、展開はややゆっくりになりました。同族相克の源氏とは異なり平氏は家族的であり頼朝等への処置もそれが出たように感じます。また吉川さんの公家社会を打破せず同化した平家政権は頼朝を助けなくても永くはもたなかったのではという考えには同感できました。2023/04/03