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内容説明
謙信を語るとき、好敵手・信玄を無視することはできない。精悍孤高の武将謙信と千軍万馬の手だれの武将信玄。川中島の決戦で、戦国最強の甲軍と龍攘虎摶の激闘を演じ得る越軍も、いささかもこれに劣るものではない。その統率者・謙信と彼の行動半径は―?英雄の心事は英雄のみが知る。作者が得意とする小説体の武将列伝の一つであり、その清冽な響きは、千曲・犀川の川音にも似ている。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
115
川中島の合戦を中心に上杉謙信の生涯を描く歴史小説。第2次世界大戦中に発表されたので、軍部におもねる表現があるのが残念だった。それでも、精鋭の部下を率いて、武田信玄の陣中に切り込んでいく上杉謙信を描く吉川英治の筆は精彩を帯び、躍動感があって読みながら胸が躍った。名高い合戦のその場に居合わせたような感じ。これが歴史小説を読む醍醐味なのだと思う。和歌や自然の美を愛し、禅に傾倒する謙信の姿もさりげなく描かれており、上杉謙信が文武両道の武将だったことが分かる。2015/03/04
糜竺(びじく)
42
上杉謙信は、私の最も好きな戦国大名で、それを私の好きな有名歴史小説作家の吉川英治氏が書いているという事で、非常に読みたくなり購入。上杉謙信の人生全般が書かれているというより、武田信玄との4回目の川中島の戦いあたりを重点的に描いている作品でした。さすが吉川英治氏だけあって、文体の表現力は素晴らしく、また、とても爽やかでした!上杉謙信と武田信玄は性格も価値観もまさに対照的ですごいライバル関係ですが、ゆえに、この作品で描かれている川中島の戦いは、ホントに手に汗握るものでした。歴史ロマンを感じさせる作品でした。2014/02/27
ヨーイチ
39
昭和12年週刊朝日連載。主に川中島の戦い前後を描いている。例の謙信が単騎で床几に腰掛けた信玄に迫る件はアクション小説さながらで迫力がある。「塩野十字軍」を読んだばかりなので合戦の実態の様なものが気になってしょうがない。恐らく武田、上杉双方に沢山の資料、伝承はあるのだろうが、それだけではなく従軍記者の様な観戦記録もあるのだろうか?合戦の始め方なんて初めて読んだ。成る程と思う。「一番槍」の高名ってこの事だったのか。最初に突っ込む勇気と味方への鼓舞、現代では似た物が無いだけに考え込んでしまう。続く2019/03/19
moonlight
35
話の分量としては第4次川中島の戦いに八割がた割かれているが、クライマックスはその後。越後軍の犠牲の多さに心を痛めて援軍の辞退を申し出た信濃の村上義清とのやり取りと、有名な、敵に塩を送るの経緯。ここに謙信の信念が表れている。陣取りではなく、平和で秩序ある世の中のために戦い続けた稀有な戦国武将。上杉謙信の理解が深まった。2021/05/13
ちび\\\\٩( 'ω' )و ////
34
上杉対武田の合戦の被害が最も甚大であった、川中島の戦い第4戦目を主軸に、上杉勢と武田勢の諸々の人物、心理、戦争内容が詳細に描かれている。始まりは武田の裏切りであった。和解したのも束の間、信玄は唐突に侵略してきたのだ。精悍孤高の謙信と千軍万馬の手練れの信玄。戦国最強の甲軍に越軍もいささかもこれに劣るものではない。越後の龍対甲斐の虎。毘沙門天対風林火山。軍神対軍神。霧の川中島で両雄の思いは激突する。お互いの心理や武将達の思いなどが描かれていて良い。最後の章が「塩祭」なのも良い。戦国時代で最も義侠心に熱い大名。2018/09/21