内容説明
父が果せなかった文学の道を、子・木山捷平もまた、志した。世に容れられぬ苦節の日々、あろうことか、捷平は敗戦直前の満洲へ渡った。一年が百年に値するような辛酸の日々。故郷笠岡へ痩せさらばえて帰り、貧乏・不幸何でもやって来いの覚悟がすわる。そして、暖かな人生声援の文学が始まる。市井人として生涯を貫いた文士・木山捷平晩年の短篇秀作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
蔦屋重三郎そっくりおじさん・寺
62
毎度飽きもせずに木山捷平を読んでいる。晩年10年間に発表した12の短編集。いつものユーモアが冴えてはいるが、少しずつ暗い死の影が忍び寄っていて淋しさも感じる作品集である。この講談社文芸文庫の木山捷平の本にはどれも木山夫人みさをさんの一文が載っていて、どれも名文で良い解説なのに感嘆する。おまけにどの文庫も岩阪恵子という人が解説しているのだが、これまた良い解説である。三島由紀夫が本書収録『かなかな』を取り上げて木山捷平を褒めている事まで引用してくれていて、私のようなにわかファンも鼻が高い。レビューつづく。2019/09/11
新地学@児童書病発動中
42
木山氏晩年の短編集。散文の極みと言える淡々とした文章から、詩情がこぼれ落ちてくる。ドラマチックなことは何も起こらない。でもそれが人生なのだろう。その平凡な人生を引き受けていくのには根気と勇気が必要だと思う。木山さんはそれを胸に秘めた作家だった。2013/02/08
軍縮地球市民shinshin
10
昭和に活躍した作家木山捷平晩年の短編集。私小説で、特に何がどうなるという話はなく、日常生活の一コマを切り取っている。地味な小説であるが、深夜に一人で読んでいると心に沁みるものがある。騒々しい小説とは対照的。木山作品は初めて読んだが、少し集めてみようかと思う。2017/02/16
hitsuji023
4
小説家として全く知らなかった人で初めて読んだが、とても良かった。物語の面白さというよりも、主人公のほのぼのとした生活感に親近感を覚える。そこがいい。2019/07/20
7kichi
4
心にしみる名短篇ぞろいなのに品切れとは悲しいことだ。2009/06/22