内容説明
「満洲」国建設に青春を賭けた主人公青木隆造。敗戦後、福祉事業団兼愛園の園長となり混血児の世話をしている。その業績が表彰された時、彼は崩壊した。仮面に封じ込めた自己の内部に蟠る「見極めがたい曠野のイメージ」と「喪った時間の痛み」とが「隠微な軋み音」を響かせ解かれてゆく。1960年代を代表する作家高橋和巳晩年の傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mstr_kk
8
僕はやっぱり、高橋和巳、好きだなーと思いました。思ってること、思いついたことをぜんぶ書いてしまうところが、文学としては決定的に弱いし、この内容は大江健三郎なら50ページくらいでもっと巧く書くでしょう。でも、このネガティヴシンキングの炸裂、人間の醜さを徹底的に描き出そうとする狂気じみた姿勢には、やはり迫力があります。ただひたすら痛ましく悲しい、胸が締めつけられるような小説でした。好きな人は多くはないでしょうが……!2021/12/20
Yasuhiko Ito
4
高橋和巳という作家は団塊の世代にはとても人気があるようだけれど、僕は初めて読んだ。やはり50〜60年代の小説家たちは、単純なストーリーを小難しく描写しないと文学者として恥ずかしいという気持ちがあったのかな。大江健三郎よりは読みやすい。次は邪宗門を読んでみようと思う。2018/09/04
KYN
0
この人は文体がどっしりとしているので、これくらいの長さがちょうどいいのかも。しかし辛いところをえぐってくる。2008/09/02
もりいあやと
0
人が夢を見たとき、堕落は始まっているのだろうか。2024/06/03
アバラ
0
卒論に使えるかなって思ったけどそんなことはなかった 書き方がけっこう親切?2020/10/17