内容説明
フランス世紀末の象徴派詩人ピエエル・ルイスが、紀元前のギリシャに女流詩人ビリチスを想定して、その愛怨の生を艶麗に歌わしめた長篇詩『ビリチスの歌』。絢爛たる才に恵まれた早熟の詩人ルイスが24歳の時、古代ギリシャ語からの翻訳といつわって発表したしたたるような官能と華麗な詩篇の鈴木信太郎による名訳。ファスケル版挿画160点を入れて贈る。
目次
ビリチス伝
第1部 パンフィリイの牧歌
第2部 ミチレーヌの悲歌
第3部 キプル島の短詩
ビリチスの墓
参考文献
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
25
古代ギリシャの架空の女性詩人に仮託して綴った長編詩。古代らしいおおらかな性愛と、ビリチスの青春から死に至るまでの物語である。古代ギリシャといえば、西脇順三郎の現代詩「Ambarvalia」が有名だが、モダニズム的に乾いた西脇作品とは違って、世紀末の雰囲気に満ちた愛欲を、息が詰まるような文体で描く。美しく華麗であるがゆえに、墓碑銘で終わる構成が、何ともいえず悲劇的。原詩も日本語訳も、失われた古代地中海世界の雰囲気を生むために、おそらくは文体や言葉に研究と工夫が行われただろう。まさに詞華集である。2014/10/14
syaori
12
理想の美の世界を己のペン1本で再現しようとした若きルイスの野心と才能が溢れる一冊です。ビリチスは紀元前6世紀頃のギリシアの詩人で、この本は彼女の詩の翻訳です、ルイスはそう偽ってこの本を出版しました。専門家も欺いたというこの本を読んでいると彼女が本当に古代ギリシアに生きていた人物のような気がしてきます。そうして彼女に触れたと思ったらそれが虚構であることに気付き愕然とします。この本の世界は「まことにもろく、人の手が触れるや否や、塵となつてくだけ散つ」てしまうのですが、だからこそ魅かれずにはいられませんでした。2016/02/03
アイアイ
8
エロティックですがゆったりした文体にドキドキしました。2019/05/02
rinakko
8
“川に沿うて、妾(わたし)は去つた、うら悲しく、たつたひとりで。けれども周囲(まはり)を見廻すと、大きな木々の後ろから、青い眼の月が妾(わたし)を見送つてゐた。”(青い眼の月) “それは、地上に 夜の薔薇の薫に勝る聖(きよ)らかなものがないから。”(夜の薔薇) “何といふ国へ来たのか、ここではこれが恋だとは、一体この島は何だらう。こんなに疲れてゐなければ、夢だと思ふところだわ……これがプサップファさまだとは、本当かしら。”(プサップファ) “世の誰も 灯火(ともしび)さへも、その夜、二人を見てゐなかつた。2018/07/01
呉下の阿蒙
4
昨夜のなごり/ 戯れ/ 留守居/ 夜に献げる讃歌2020/02/26