内容説明
夫との別居に始まり、離婚に至る若い女と稚い娘の一年間。寄りつかない夫、男との性の夢、娘の不調、出会い頭の情事。夫のいない若い女親のゆれ動き、融け出すような不安を、“短篇連作”という新しい創作上の方法を精妙に駆使し、第一回野間文芸新人賞を受賞した津島佑子の初期代表作。
目次
光の領分
水辺
木の日曜日
鳥の夢
声
呪文
砂丘
赤い光
体
地表
焔
光素
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
松本直哉
23
母は、妻はこうあるべきというような規範も世間体も何もかもかなぐり捨てて、娘をほったらかして惰眠をむさぼりウイスキーを痛飲し男を呼び込み隣人から呆れられる主人公の言動が清々しいほどあっけらかんとしていて、それは彼ら母子が引っ越したビルの最上階の、光と風に溢れる部屋と同じように明るい。その部屋は身勝手な夫の羈絆から初めて自由になって歩みだす新しい人生の象徴でもあった。短編集といってもいいほど各章は独立していながらも、通して読めば、逆に娘に励まされながらも、少しずつ人生を生き直そうとする一人の女性の肖像が浮かぶ2026/01/16
松風
17
光彩の濃淡で描かれる情景に目が眩み、主人公の〈夢〉に引き込まれて、一緒にうなされる。2014/04/09
ソルト
15
昭和54年、第1回野間文芸新人賞を受賞した小説です。夫と別居中の「私」とその娘の日常。昭和の湿り気を感じました。居心地は良くないのに、なぜか懐かしさにキュンとなる、みたいな。「私」は眠り、しょっちゅうおかしな夢をみる。病んでる?あんな男が旦那だったら病むわな。2017/12/25
スイ
13
恥ずかしながら全く著者のことを知らなかったが、書店でたまたま目に留まってめくり、冒頭だけであまりの上手さに目を剥いた。 夫と別居し、幼い娘と二人で暮らす女性の一年を描いた短編連作集で、もうとにかく上手い。 母親として直視したくないところまで暴かれていくのでヒリヒリしたけれど、ここまで書かれるといっそ爽快ですらある。 見事。 唸りながら解説を読み、太宰治の娘と知った時は衝撃だった…。 思い返してまた色々と突き刺さったけれど、その背景を考えに入れなくても存分に凄みのある作品だった。 他の作品も読みたい。2019/07/18
sabosashi
11
女主人公にとっての女児とは他者であるのか、それとも自己の鏡であるのか、といったところを手がかりにして読み出す。しかし主人公のいたたまれなさ、頼りなげなところが迫ってくる。パートナーとしての男との別れ話が意味を持っているがじつは主人公を含めて状況がきっちり客観的に受け止められていない。つまり自己韜晦的な雰囲気が濃厚ですべては独り舞台といえそうなほど(著者の個人的な事情に分けいらず、この作品のなかだけから読み取れる世界のみに言及しているわけである)。それでも最後には始まりと終わりらしい空間が出来上がっている。2013/12/18




