内容説明
金沢の旧制高校から東京帝大に入学した片口安吉の〈新人会〉での活動を核に、豊潤な感性で描く精神の軌跡。時代の終焉を告げる天皇の死。合同印刷ストライキ。激動の予感を孕みながら展かれてゆくプロレタリア運動。流されるままに流れる〈心〉の襞の光と影。『梨の花』『歌のわかれ』に続く自伝的長篇小説。毎日出版文化賞受賞。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Ф
1
意外と面白い。文章に味がある。語りの視点は現在に行ったり過去に行ったり、フト思い出した誰かの顔や光景を語るなど、ジグザグと進む。また大正末期のインテリ学生の知的交流も興味深い。明らかにモデルがいる(辰野隆吉は青野季吉か)。背景知識があればなお楽しめる。2025/07/24
Shue*
0
青年・安吉の成長譚。緊密な文体で、時間軸もあっちにとびこっちにとび、知らぬ間にもとに戻ってきたりする。だから、読み進めるには慎重を要する。が、やめられない。偉そうにレーニンを語る友人との間に感じる劣等意識や立場の齟齬。何度も留年した挙句、単位ほしさに教授の家にすがり付いたり、試験の身代わりを依頼したり。なーんだ、やってることも悩むことも、皆一緒じゃねーか。ユーモアと迫る緊迫とが、流石の筆致。2013/03/15
doradorapoteti
0
面白い!!
アヴィ
0
小林多喜二とはまた違ったプロレタリア文学の最高峰。癖が強めでマルクスに被れレーニンを語る若き共産主義者の学生達、体制に反しながら生きることの難しさや理想に生きる難しさが語られる。そして多喜二の蟹工船でも感じたが、プロレタリアの作家の文章は内容に反して読みやすい。2025/05/30
けいこう
0
ドイツ語の通訳をする場面が良かった。2021/04/12
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