内容説明
「いい子」のヘリーが、始業そうそう泣きながら教室をとびたしていってしまった。先生は、なぜかこのあたしに、追いかけていってついててやりなさいっていう。親友でもないあたしがなんで?でも、とつぜんぱっと、ひらめいたの。ヘリーの涙のわけも、あたしが選ばれたわけも。母親の新しい恋をきっかけに、大きな精神的成長をとげる少女を、ユーモアをまじえいきいきと描く。1990年度カーネギー賞、ガーディアン賞受賞作品。中学生向き。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェルナーの日記
222
一見ジャクリーン・ウィルソン風のティーンエイジャーの思春期の特有の反抗を描いたヤング・アダルト作品として映るが、その実政治的メッセージ(反核運動)を含んだ一風変わった作品。主人公キティは、母と妹の3人で暮らすシングルマザーの一家。そこに母のボーイフレンド(再婚相手候補)のジェラルドがやってくる。幼い妹のジュードはすぐにジェラルドに懐いてしまうが、キティは価値観が全く違うジェラルドが大嫌いだった―― さらにキティ母親は反核運動家で仕事(看護師)の合間に、街に出ては反核キャンペーンのデモに参加する日常だった。2019/06/18
ちゃーちゃん
3
賞を取っている作品なので読んでみました。ただでさえ思春期で大変なのに、父が出ていき、母は核廃絶運動にやっきになり、おまけにジェラルドという父よりも年上のおじさんが家に頻繁にやってくるようになる。なんとかして追い出そうとするキティ。そんな中でジェラルドの人間性を観察していくうちに・・・。スコットランドがイギリスから受けている待遇なんかも感じたりして、思いの他深い作品だと思いました。2015/12/17
星落秋風五丈原
3
主人公キティとママと妹と3人の生活にある日ママの恋人ジェラルドが割り込んできた。彼はキティ達の核廃絶運動や暮らし方、ママの教育観をずけずけと批判し、キティを苛立たせる。3人だけの平穏な生活を取戻すため彼を閉め出そうとやっきになるキティだが次第に彼の存在を受け入れていく。2005/01/08
元素53
2
新しく家にやってきた父親と女の子とその家族の話。ところがどっこい!離婚の犠牲になるかわいそうな子の哀れな話、ではありませんでした。キティが語るジェラルドはとても嫌な奴。明らかに公平性に欠けていておおげさです。だけどつい『うんうん!』とうなずいてしまいそうな語り口で次々と読めました。原子力反対の運動に没頭する姿はわたしの目には滑稽に映るのですが、そういう時代だったのか、イギリスでは元々盛んなのか。バックグラウンドがわからないと理解しにくい点もいくつかあったように思いますが、とにかく面白かったです。2014/05/18
zzz
1
ママの恋人を検分する娘の眼差しの、何て鮮やかなこと。ママの恋人にテレビがみえにくいように、テーブルに通学カバンをわざと置いてみたりね。でもジェラルド(ママの恋人)がママを褒めておだててママの機嫌をすっかり直しちゃうのは凄いと思った。簡単な言葉だけど、男性にはきっと難しいこと。これを読んでから、夕食の食器をすぐ洗うようになった。だって、ジェラルドにだらしない女って思われるのは何となく癪だから!
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