出版社内容情報
【内容紹介】
平成4年度 大佛次郎賞受賞
国際的視野で書かれた日本文学史・古代編。
語りと謡いの原始的混沌から大陸文化の受容によって和歌や説話や詩文が成立してくる過程を掘下げ、古代日本文芸の特質を明らかにした。著者はもと筑波大学副学長。
●日本文藝の特質
日本文藝の性質を全体として「世界」の場で観察するとき、第1に認められるのは、外形の面で短章的だという点である。
日本文藝の特質として第2に認められるのは、次のようなさまざまな面において対立性が鋭く現われないという点である。
(1)構成における対立者の欠如(2)自然と人間との隔てなさ(3)階級がジァンルに対する関わりの非在(4)個人と集団との協調傾向(5)制作者(ないし演奏者)と享受者との相依関係
日本文藝に見られる第3の特質としては、作調(トーン)における主情性および内向性を挙げなくてはならぬであろう。――(本文より抜粋)