出版社内容情報
【内容紹介】
世界初の5大陸最高峰登頂や北極圏単独走行を成功させて、栄光にに輝いた植村直己は「前進」のみを選んで、ついに厳冬のマッキンリーに消えた。手記や手紙を軸に広範な取材を加えて、43歳で幕を閉じたこの現代の英雄の素顔に迫り、冒険行の壮絶なドラマを感動的に描く。''86講談社ノンフィクション賞受賞作品。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
goro@the_booby
48
植村直己の軌跡を追ったノンフィクション。もうマッキンリーに消えて36年も経つんだな。エベレストから五大陸最高峰登頂、北極点、グリーンランド縦走と大きくなるにつれて電通とかが関わって来るなんてね。生きて帰ってこそ冒険と自身が言っていたのに悲しい結末を改めて想う。奥様との関係や人となりが知れて好著。その昔、日高町の記念館へ訪れたことを思い出した。今でもマッキンリーのどこかにいるのだろう。来年は生誕80周年とのことで今度は板橋の植村冒険館へ行こうと思います。2020/10/28
hatayan
44
1986年刊。国民的な冒険家として親しまれた植村直己の評伝。エベレスト登頂直前にテントで自慰していたエピソードなど、夫人や山仲間へのインタビューを通して『青春を山に賭けて』などの自伝では語られない植村像を浮かび上がらせます。 北極圏を犬ゾリで横断する旅費を捻出するためにスポンサーを頼ってしがらみを背負い、隊長として挑戦したエベレストで仲間を喪い登頂を断念。一度は挫折した南極大陸縦断の夢を実現させようと米国デュポン社の協賛を取り付け、健在をアピールすべく厳冬期のマッキンリーに単独登頂した後、消息を絶ちます。2020/06/18
あかつや
8
以前読んだ植村の自伝『青春を山に賭けて』で、アフリカで命がけの登山に挑む前夜に黒人女性を相手に童貞を捨てたというエピソードがあり、心底かっこいいと思ったが、こちらにはもっとすごい話があった。それは翌日に日本人初のエベレスト登頂を狙おうっていう、標高8513メートル地点の最終キャンプ地での夜、なんと植村はそこでマスターベーションをやってしまったのだという。ただ寝ているだけで命が危ないような場所で、なにやってんだこの人!?いろんな人の証言で構成されるこの本では、自伝とは違う外から見た植村象が知れて面白かった。2019/04/06
タカボー
4
今は本屋では買えないのかな?古本をネットで購入しました。こんな本が本屋で買えないのがもったいない。本人の青春を山に賭けては読んだことがあったけど、公子夫人をはじめ、他の人の目線からの話もあって面白かった。この世の美しいもの、不思議なもの全て見るために命を賭ける。純粋で熱い情熱がビシビシ伝わってくるいい本でした。2018/03/18
yamakujira
4
植村直己の伝記。フォークランド紛争がなければ、南極冒険を実行できて、ひいてはマッキンリーでの悲劇もなかったかもしれないと思うと、運命の機微を感じるなぁ。なにかに追われるように死地へと向かう植村の姿からは、冒険に挑む高揚だけでなく、なぜか痛々しさが伝わる。植村に限らず、スポンサーを募っての冒険って、人の金で遊ぶという僻みはともかく、行動や装備がひも付きになる危険があるよね。43年という長くも短くもない人生を駆け抜けた植村は、自分勝手にも悲壮にも見えるけれど、きっと幸せだったと信じたい。 (★★★☆☆)2014/12/26