内容説明
きらびやかな宝石の匣。だが開けてみると、肝心の宝石は消えうせ、赤い絹布の窪みだけが残っている。この匣は虚とか不在と名づけられるべき、天与の贈りものであろうか。戦争の傷をその後の人生に刻した三姉妹を美しい宝石匣の虚になぞらえ、妖美壮麗の小説世界を築く幻想文学の傑作。会心の連作集「とらんぷ譚」の完結編。
目次
1 三人姉妹予言に戦くこと並びに海の死者のこと
2 老女独り旅のこと並びにセーヌ河に浮かぶ真珠のこと
3 花火と殺人の誘いのこと並びに青は紅に勝つこと
4 砂時計の砂滅びのこと並びに翔べない翼のこと