内容説明
不敵な野望と奔放さに満ちた若き伊達政宗と奥羽で対峙する蒲生氏郷―二人にとって越えることのできない大きな存在が秀吉であった。天下に志を得ずに終った彼らの胸中の苦悶を描く表題作のほか、抗いがたい力に翻弄され、結局は身を滅ぼしていった武将たちの悲話10編を収録。待望の歴史小説傑作短編集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
憲法記念日そっくりおじさん・寺9条
64
近頃松本清張に少しハマっている。本書は清張の10本の歴史小説短編集。うち4本は他社の短編集で読んだ事があるので、未読の6本のみ読む。10本中2本は江戸時代ものだが、あとは戦国ものである。伊達政宗&蒲生氏郷を扱った表題作、秀吉の晩年を扱った『英雄愚心』、『細川幽斎』はイマイチだった。双葉文庫の清張短編集『武将列伝』に入ってないのも頷けた。しかし福島正則を扱った『転変』はなかなかよかった。面白かったのは江戸もの『脱出』。武士道残酷物語である。全て昭和30年前後の作品。その古びない人間観で読ませていると思う。2017/05/11
キムチ
54
ひょっとしたら再々読?舞台は中世なれども、面白い~現代にあるある人間社会の丁々発止。渦巻くどす黒さ、強かさ、生存、上昇志向をかけた計算の動き。秀吉、家康は多くの作家描くところなので超有名だが・・やはり、嫌な人間性(好かれた人物なら権力は縁無し)翻弄された最上や福島の悲哀。政宗と氏郷の綱引きも面白い。伊東義祐の老残の誇り、男色でのし上がった果ての男の無残、忠の一字で決壊した数正、太平なれば重宝された細川幽齋の乱世における存在・・穴が開くほど資料を読みつくした清張ならではの十短編。最後の中国地方「匿名大名→2024/12/03
とし
10
松本清張の歴史モノ短編集。清張の歴史モノは初読み。冷徹な語り口で落ち着いた王道歴史小説、という印象。司馬遼太郎さんより一世代昔の人だったんだな。当時はどういう評価をされてたのだろうか。僕は司馬さんの戦国モノは全部読んでるけど、人物のチョイスやエピソードの類似が面白かった。同じ史料を下敷きにして書いてるからだろう。2017/03/31
とめきち
8
転変:福島正則は関ヶ原の戦いの勝利に貢献するも、豊臣家に近い事を理由に家康から疎まれ、最後は流謫地にて最期を遂げる。つくづく清張は人間味のある人物にスポットを当てるなぁ。決して偉人ではない。むしろ酒に溺れ、家臣には理不尽な言い掛かりをして切腹を迫る愚人である。ただ、酔いから醒めたとき自分のしたことに後悔し号泣する。この不器用さが清張にスポットを当てられた最大の理由だろう。不器用なだけに、終始、家康や秀忠に振り回され同情する部分もある。清張は、こういう不器用な人物を決して切り捨てない!2025/01/18
ナガサワ
3
初松本清張だったが、自分とは合わないなぁ、コレ……文章のテンポが合わないというか、話が上滑りして頭に入ってこない。残念2023/04/06