出版社内容情報
【内容紹介】
綿密な取材の積み重ねと作家の洞察が鋭く抉り出す落ちた偶像・塩路一郎氏の真実。労働者の間では「天皇」として恐れられ、「会社の発展」をめざすこと社長以上という、豪華クルーザーで美女と過ごし愛人を囲う「委員長」とは何か?何が彼をそうさせ、誰がそれを許したのか?その疑問を解く独自の記録小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
72
日産の塩路一郎氏をモデルにした小説。真実はよくわからないが、労働者から「天皇」と恐れられ 君臨した労組のトップの、やがて没落していくまでを 丹念に描く。1980年代の英国進出プロジェクトを巡っての日産内の 対立は緊迫感があり、戦後の企業内の暗闘を読者に 伝えてくれる。
姉勤
25
かつて日産の労働組合長として社内外に有形無形の権力を振るった、塩路一郎。労働者の権利という「タテマエ」のもと、経営方針や運営に干渉し、やがて私情と私怨から妨害、それをブラフにした利益と地位を要求する。トヨタの後塵を拝するまでガタガタになった経営を立て直すのため、のちにカルロスゴーンを招聘せざるを得ない事になる。豪邸やクルーザーを有し豪遊して憚らない、この「労働貴族」らのせいで以後の労働組合の形骸化、会社員の待遇や給金が二の次になったと考える。年に一度のメーデーで遊ぶために組合費を搾取する特権階級は未だに。2016/06/06
誰かのプリン
16
石原社長と労連塩路会長との 確執、塩路会長の私利私欲のため組合を利用し、工場のラインをいとも簡単に停止させる。 その結果、業界トップのトヨタに引き離される結果に。 塩路会長追放劇が描かれていないのにはがっかりしました。2017/04/25
巨峰
6
80年代の日産自動車が舞台。経営者が労働者を支配するために労組幹部を甘やかし続けた結果、その労組幹部は思い上がりモンスター化する。日産といい、日航といい、常軌を逸した労使関係は腐敗を産み会社自体を危うくする。結局この小説は終わりはない。カルロスゴーンがくるまでは日産の異常な事態は終わらなかったようです。2009/09/29
そらいろ
4
久しぶりにノンフィクションを読みました。労働組合トップと経営トップの話。難しいかと思いましたが、言葉や人物についての説明があり全体も短いので読みやすいです。他の作品も読みたいです。2016/01/01