出版社内容情報
奇想天外想定外 驚異のケーサツ小説登場!正義を信奉し異常犯罪に執着する唐雲刑事は、管轄内で発生した殺人事件に強く反応し、人目を盗んで奇怪な行動をとり始める。唐雲が追い求める正義の真相とは!?
内容説明
東京で発生した美容整形クリニック院長惨殺事件。被害者は体中に傷を刻まれ、全裸で吊るされていた―。謎多き犯行に困惑する捜査員たちのなかで、ただ一人、若手刑事の唐雲蓮斗だけは事件解決への覇気をたぎらせる。さらに密室殺人や死体アートなど不可解な猟奇事件の迷宮へと連鎖するなか、本庁の敏腕女性刑事とコンビを組んだ唐雲は、極秘裏に独自の捜査を展開していくが!?―。
著者等紹介
霞流一[カスミリュウイチ]
1959年岡山県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。94年、第14回横溝正史賞佳作となった『おなじ墓のムジナ』でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
浅木原
5
バカミス? 否、これは紛れもなく本格の傑作である。読み始めは正直ちょっと眠かったんだけど、主人公が「ピポーッ!」と暴れ出してから俄然目が覚め、最終的な〝解決〟に至っては開いた口がふさがらない。何を書いてもネタバレになる類いの作品だけど、××テーマと××××の組み合わせを「×××××」の××形式でやる、という意識的かつトリッキーな構造の中でバカミス論まで展開するのには大笑い。ロジカルな〝解決〟がもたらすものは類例作がすぐ思い浮かぶけど、それをこの形式でやるという抜群のアイデアを見事に成立させた傑作。脱帽。2017/02/19
町田一軒家
5
あとがきにある通り、多重解決を逆手にとったミステリで、本格の王道を外しまくった異色作。ぶっちゃけ主人公・唐雲蓮斗に感情移入できないが、どういう展開に持っていくかわからないが故に、ぐいぐいと読ませてくれる。真相から乖離した偽の解決に持っていく推理と伏線の回収は正に圧巻の一言。クライムサスペンスの快作(怪作?)ともいうべき作品。2013/03/26
zazo嶋
5
1年半かかったという霞氏、渾身の異色作品。ご自身の あとがきでも触れていますが、三重構造の真相による パズラーが織り成され、そして、警察小説で、本格ミステリで、 アクション小説という三重構造にもなっています。 異色なのはこの三重構造の作品...ではなく主人公の刑事 「唐雲蓮斗」の設定とキャラにあります。こんな主人公の 刑事...見たことないですw。序盤では想像がつかないほど 完全なる◯◯◯◯ですw。正義の為に己の全てを投げ打って、 己の修練、鍛錬を欠かさない、もの凄い努力家で、ある意味 刑事の鏡なんです2012/02/15
ア・トイロッテ(マリポーサとも言う)(各短編の評価はコメントで)
5
★★★☆ 7 これは予想外に後味悪い。バカミスであるのは理解できるが、マジキチな主人公がどうも受け入れられない。自分の期待していた結末じゃなかったのも後味悪さに貢献している。だが、ミステリーとしてはかなり斬新で興味深い内容だった。究極的な自作自演で、主人公の構築する偽の論理は圧巻。ここまで本当に見える偽の論理は、前に読んだ「虚構推理」を彷彿とさせる。2012/01/07
ふじさん
5
初・霞流一。バカミスの書き手という印象が強かったが、本作はむしろ「アホミス」と形容した方がしっくり嵌りそう。乱発される数々のアホ設定についても、良く良く読むと意外な程ディテールが細かく、一々笑わされた。一方、本格ミステリとしての読み応えも抜群。味付けが濃過ぎる印象は否めず胸焼け必至ながら、実に論理的な推理が楽しめる。唯一、主人公の人物造形だけは結末まで馴染めず。著者も織り込み済みだろうが、これが純粋な正義の姿とは到底思えず、嫌悪感ばかりが募った。痛快なのに後味が悪い、という謎の読後感が残る一作。ピポーッ!2011/11/16