内容説明
記憶の一部をなくした男が書いた奇妙な童話『タンジール蜜柑共和国への帰還』。蜜柑の樹の上にある村、ネジ式の関節を持つ妖精、人工筋肉で羽ばたく飛行機―。そして彼の肩甲骨には翼のなごりがあった!妄想としか思えない男の話から、御手洗潔が導きだした真相とは何か―!?驚愕の結末が待つ本格ミステリー。
著者等紹介
島田荘司[シマダソウジ]
1948年広島県生まれ。武蔵野美術大学卒。1981年『占星術殺人事件』で衝撃的なデビューを飾る。小説のほかにも日本人論など多くの評論を著している。現在は、ロスアンジェルス在住
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感想・レビュー
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がたやぴん
82
なんだこれ?島田荘司作品です。納得。御手洗が序盤から登場し、作中作の童話に隠された事実を明らかにしていく。ファンタジーやSFの要素に加え、脳科学だけでなく、隕石や化石から年代測定などの科学的要素も多く盛り込まれ著者らしい作品といえます。今回はスウェーデンが舞台のため、出番のない石岡くんの代わりに友人のハインリッヒがワトソン役を努め、一問一答式に近い形で事実を積み重ねていく。科学的知識に弱い石岡くんより適任でした。作中作が記憶の三層構造という形で表現されているところが面白い。2016/12/07
雪紫
71
「御手洗はもうメタ探偵名乗った方が良いと思う(真剣)。」記憶障害の男性が書いた童話「タンジール蜜柑共和国への帰還」。合理的解体をされる文章から浮かび上がる殺人と変わる書式。新たな「眩暈」の幕開け。最も「眩暈」は手記が読みにくくて、こっちはその逆だけど。童話の何処か浸っていたい世界に(マーマレード作りのシーン好き)・・・襲いかかる最後は肝が冷えた。・・・あの事件の背景といい御手洗は良く、周囲の信頼勝ち取った上で解決出来るよな(そう言えば読了日に下ごしらえしたアドボ煮たわ)。2022/09/15
山田太郎
46
縦になったり横になったりでよくわかんない。再読ですが、まるで記憶になかった。石岡コンビがいいなとやっぱり思った。なんか御手洗さんの性格がちょっと違う感じで違和感。でも、剛腕ぶりが無敵で面白いなと。島田荘司モードに入ってるので、別のも読もうかと。2019/11/25
優希
40
妄想としか思えない男の話はネジが鍵となる殺人事件でした。御手洗さんが導き出した真相には驚愕としか言えません。本のかなりの分量が横書きだったので、読みにくさはありましたが、プロットなどの高度さなどはさすが島田先生です。2024/03/30
リー・チャン
19
★☆☆☆☆ 首が切断され、頭部と胴部にそれぞれネジが埋め込まれた状態の遺体が発見される。カギとなるのは、記憶喪失の男性が執筆した小説。御手洗は小説の内容に解決のヒントがあると踏み、物語を紐解きながら青年の心の奥にしまわれた記憶を探っていく。 うーん、推理が何とも回りくどくて、そのくせ導き出された真相が偶然頼りだったことが分かり、ちょっと拍子抜け。縦書きと横書きが交錯していたが、どういう意味だったのだろう?唐突に差し込まれた「ゴーレム」の章も何か意味があると思いきや、本編との繋がりが分からず…。2022/10/24