講談社ノベルス
火蛾

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ 新書判/ページ数 204p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784061821491
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0293

内容説明

十二世紀の中東。聖者たちの伝記録編纂を志す作家・ファリードは、取材のため、アリーと名乗る男を訪ねる。男が語ったのは、姿を顕わさぬ導師と四人の修行者たちだけが住まう山の、閉ざされた穹廬の中で起きた殺人だった。未だかつて誰も目にしたことのない鮮麗な本格世界を展開する。第十七回メフィスト賞受賞作。

著者等紹介

古泉迦十[コイズミカジュウ]
1975年生まれ。『火蛾』で第17回メフィスト賞を受賞しデビュー
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

HANA

80
傑作。12世紀イスラム世界で起きた殺人事件を扱っているのだけど、そのミステリの下から隠し切れない幻想文学が顔を覗かせている。この両者が合わさった傑作というのは少ないと思うのだが、本書は紛れもなくその幸福な結婚の一つ。内容は読者もファリードと共に行者アリーより事件の話を聞くという枠物語の形式であるが、物語の最後に何故この形式にしなければならなかったのかという必然性に当たった時は思わず絶句した。事件自体も内在する論理に照らし合わせればどれも必然だし。読者も火蛾のように、物語の中に誘い込まれる一冊であった。2020/03/04

ハタ

76
アッラーの他に神なし。アッラーに栄光あれ。イスラームにおける概念の一つ「タウヒード(神の絶対唯一性)」を舞台設定に仕込んだ大変手の込んだ一冊。神道やキリスト教は調べた事があるのですがイスラームは全く知識がなく、ちんぷんかんぷんな専門用語を読んで戻って繰り返しながら読み進め、終盤数頁で全ての謎が明かされた時は思わず溜息が出ました。抽象描写として蛾が火に飛び込む様子を人間に喩えるシーンがありますが、これが二面性を持っていた点も面白い。200頁程ながら濃い内容でイスラームの概念も勉強出来て良い時間を戴きました。2016/05/29

財布にジャック

58
この小説は宗教に関する専門知識がないと、苦戦を強いられます。しかし、異世界に足を踏み入れられるので、魅力的ではありました。ラストの謎解きでやっと霧が晴れてきましたが、それまでは何が何やら全くわからなかった自分の無知が恥ずかしいほどです。ハードルが高いミステリーでした。2013/09/17

雪紫

51
「崑崙奴」前に再読。変わらず幻想的な舞台と何処まで本当なのかわからなくなる世界に引き込まれる。おおまかなところは忘れてなかったのに、それでも夢心地。2024/11/28

セウテス

49
十二世紀中東の国に、聖者列伝の編纂に訪れた主人公が、取材で地元の男から聞いた話を紹介している形になっています。この話の特徴は、単に場所的にイスラム世界で起きた殺人では在りません。イスラムの宗教や生活の中で密接に起こった事件の話で、他に日本人による類似の作品はないと思います。登場人物もたったの五人しか居ませんので、密室の謎や犯人の目星も付けやすいでしょう。ラストの問答でも、この世界ならではの考え方や常識が基本にあります。イスラム世界の宗教感とミステリが融合した、作者の最初で最後の傑作かも知れません。2014/10/15

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/22643
  • ご注意事項

最近チェックした商品