内容説明
「時間を追い越し、時間が追いつけないほど足早に走って、高く飛翔してゆく」モーツァルトの本質とは何か。『フィガロの結婚』の革新性、「愛の讃歌」としての『コシ・ファン・トゥッテ』、「協奏曲」の冒険、『魔笛』『レクイエム』における「死と救済」…その「音楽美」をさまざまな角度から探り、モーツァルト演奏の愉しみ方を考える、贅沢な音楽論。
目次
音楽の時間を翔る鳥―動き続ける永遠
父、レーオポルト―管理との闘い
モーツァルトとヨーゼフ二世―ウィーンにおける一〇年
『フィガロの結婚』―「与える」方向での人間化
美を発見する天才―輝ける『ドン・ジョヴァンニ』
『コシ・ファン・トゥッテ』―モーツァルトの愛の讃歌
「協奏曲」―開かれた会話の音楽
死と救済―『魔笛』と『レクイエム』をめぐって
変わらざるモーツァルト―情報の洪水のなかで
モーツァルト演奏は、大胆に―『クラヴィーア・ソナタイ短調』の演奏史〔ほか〕
著者等紹介
礒山雅[イソヤマタダシ]
1946年東京生まれ。東京大学文学部卒業。同大学大学院、ミュンヘン大学留学を経て、現在、国立音楽大学教授、いずみホール音楽ディレクター。2006年より、日本音楽学会会長。専攻は音楽美学・西洋音楽史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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山田
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そもそも作曲家には叙述型タイプと会話型タイプがある。叙述型はある論理性を持って一元的同質的な音楽構成を追求するタイプであり、バッハ、ハイドン、ベートーヴェンなど多くの巨匠がこちらに属する。バッハのフーガやハイドンの弦楽四重奏曲、ベートーヴェンの交響曲等がその優れた実例で、禁欲的・求道的で、閉じた・完成された心性の表現である。他方、モーツァルトの会話型は視点が一元化されず絶えず複数の領域を動き、都度新たなバランスが獲得される。オペラのアンサンブル楽曲、コンツェルト作品が端的な現れである。2022/05/16