内容説明
漫画は世相を写したタイムカプセルである!洋装を受け入れながらチョンマゲを捨てきれない人々。徹底的に諷刺される伊藤博文・黒田清隆ら、為政者たち。抑圧され嘲笑される女性たち。そして公権力と戦う漫画家たち―。明治期の傑作漫画百余点を通して、激変する社会の中での戸惑いと好奇、反骨と愛着が交錯する「明治」という時代を活写する。
目次
第1部 江戸から明治へ(チョンマゲを捨てきれぬ人々;明治初年の浅草;洋装者への好奇の眼 ほか)
第2部 諷刺される明治の人々(三島通庸の悪政を批判した漫画;伊藤博文を怒らせた漫画;黒田清隆への抵抗 ほか)
第3部 明治の漫画史(発禁漫画第一号;不敬罪か風俗壊乱罪か;『東京パック』と北沢楽天 ほか)
著者等紹介
清水勲[シミズイサオ]
1939年、東京生まれ。立教大学理学部卒業。編集者、美術館研究員を経て、帝京平成大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Chicken Book
9
漫画史を戦前まで遡ることのできる一冊。大学でも基本的には戦後漫画史が中心に教えられたので、この本はかなり新たな発見が多かった。とかく戦前の漫画は風刺と弾圧がポイントかと思う。ほんと「そこまでやっちゃっていいの?」というくらい明治時代の漫画はエッジが利いている。そんな貴重な絵も多く挿入されていて、読んでてとてもおもしろかった。2021/09/25
bouhito
6
霞が関界隈では(民間企業でもそうなのか?)スライド1枚にまとめた図を「ポンチ絵」というのだけれど、「ポンチ」の語源が権力を皮肉る風刺雑誌「ポンチ(英名はPunch(パンチ))」から来ていることは面白い。批判の為の批判をするマスコミをとやかく言う人がいるけど、マスコミって風刺と滑稽の為にあるんじゃないのかなとも思う。明治時代は、まだ写真で瞬間を切り取ることができなかった時代(時間がかかるので写真に残る明治人はみんないかめしい顔をしている)、何気ない一瞬を伝えたのはポンチ絵をはじめとする漫画だった。2015/11/11
osakanazuki44
5
ビゴー、ワーグマン等外国人漫画家は、治外法権の特権を生かして居留地で日本の権力者や風俗を風刺した。小林清親、本多錦吉郎等日本人漫画家は、権力者の風刺画で読者の人気を得た。宮武外骨、幸徳秋水らは漫画のアイデアを提供した。2021/05/07
Gladcolza Bambootail
1
昔も今もやってることは変わらないけど、明治の人は他者を文字や絵でつつく時にも「愛嬌」「諧謔」「面白み」を忘れないなあ、とちょっと羨ましく思った。伊藤博文の嫌われっぷり&板垣退助のいじられっぷりに思わず笑ってしまった。今の評価と当時の評価の違いがすごい。2013/05/25