内容説明
ナチスによるユダヤ人虐殺は何故起きたのか。ユダヤ人への過酷な差別や迫害、残忍非道な異端審問。ユダヤに寛容なイスラムに対し、血の滲む西洋の歴史。ゲットー発生の地ヴェニスなどユダヤ人殉難の地を旅し、ヨーロッパの陰の歴史、反ユダヤ主義の根源に迫り、近代思想の意外な真実と陥穽を鋭く剔出する。識者絶賛、和辻哲郎文化賞受賞作品の待望の文庫版。
目次
第1部 ヴェニスからアウシュヴィッツへ(ヴェニスのゲットーにて;敗者の歴史;コロンブスとユダヤ人問題―一四九二年の地平;スペインへ ほか)
第2部 ドイツ反ユダヤ主義の諸断面(歴史的回顧;マルクスと反ユダヤ主義;ドイツにおける斎藤茂吉―ユダヤ人問題をめぐって)
第二次世界大戦後のドイツにおける反ユダヤ主義問題
著者等紹介
徳永恂[トクナガマコト]
1929年、さいたま市生まれ。東京大学文学部哲学科卒。現在、大阪国際大学教授、大阪大学名誉教授
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
なおた
2
もともとが、みすず書房に収録されていた『ヴェニスのゲットーにて‐反ユダヤ主義思想史への旅』という1冊の、5分の1程度に縮刷して講談社学術文庫で出したもの。付論「第二次大戦後のドイツにおける反ユダヤ主義問題」(初出:雑誌「みすず」1992年12月号)における論考が、個人的には興味深く拝読致しました。著者の徳永氏は、フランクフルト学派による名著『啓蒙の弁証法』(ホルクハイマーとアドルノの共著)を邦訳した碩学で、その1冊は、現在、岩波文庫に収録されております。ご参考までに...。2021/10/13
unpyou
2
ヨーロッパの反ユダヤ主義思想史の軌跡を追って、ヴェネツィアにかつてあった史上初のゲットー跡、コロンブス船団の出航とともにユダヤ人たちが全土から追放されたスペイン、そしてアウシュヴィッツへと旅する紀行文。また後半にはマルクスへの「反ユダヤ主義者」という評価の元となった著作の検証や、斎藤茂吉の滞欧記にみる茂吉のユダヤ人感(彼はヒトラーのミュンヘン一揆に接している)の分析などの論文が収められている。所々面白い指摘はあるものの思想史スケッチ的な著作で、私自身にはこの分野への興味が喚起された以上の印象はなかった。2013/05/18
シュミットさん
1
反ユダヤ感情の深淵を探る画期的労作!2008/11/03