内容説明
栄光の座から幽囚の身へ。破竹の勢いでヨーロッパを席捲したナポレオンは、ロシア遠征に失敗、急転直下、転落への道を突き進む。パリ開城、皇帝退位、エルバ島流刑。ウィーン会議の後、パリ帰還、百日天下、再び流刑、落魄の日々、そして死。下巻は、凋落の一途を辿る英雄の末路とその心の葛藤、および著者のナポレオン観を記す。出色の英雄伝の新訳。
目次
第4章 海洋―ロシア遠征から逮捕宣告まで
第5章 岩礁―セント=ヘレナ到着から死まで
著者等紹介
ルートヴィヒ,エミール[ルートヴィヒ,エミール][Ludwig,Emil]
1881年ドイツのブレスラウ生まれ。1910年以降ドイツ、スイスで活躍した小説家・伝記作家。32年スイスに帰化。ビスマルク、ゲーテ、ワーグナー、リンカーン等に取材した辛辣な心理描写による伝記的作品を著した。1948年没
北沢真木[キタザワマキ]
1966年、早稲田大学文学部卒業。1970年、スウェーデン、ニッケルヴィク美術学校卒業。1977年、パリ第四大学中退
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感想・レビュー
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Tai
17
アレクサンドロス大王を夢想した彼にとりイギリス制覇はインド侵攻の口実にすぎない。革命の申し子は古代ローマの精神をパリに導入し、ナポレオン法典、現代的教育、合理的行政、道路建設、沼湖干拓事業は欧州に広まって行く。欧州連合の構想を持っていた。しかし古代ローマの大家長はハプスブルク家の裏切りは想像できない。「余の失態の原因は、余自身に他ならない」絶えざる熟慮、数学的思考「事物の真髄」と真実に耳を傾ける正義感も持つ彼は息子に言い残す。「余は武力で欧州を服従させる必要があった。今は言葉により説き伏せねばならない」2021/08/27
オザマチ
8
敗退し、病魔に冒され、裏切りを重ねられたナポレオン。それでも、最期は不思議なほど惨めな印象を受けなかった。2014/02/03
nakaji47
2
極めて珍しい形の歴史書ではないかと思う。稀代の英雄の業績を追うのではなく、その人物の内面の歴史を膨大な口述筆記や手紙や周辺の人々のコメントから丹念に再構成した人生の史書である。戦いの経過や時の政治状況など外的要因については一通りの知識があった方が理解しやすいのは確かだが、鋭い洞察により、その時々の内情の葛藤が苦しいほどに迫ってきて、客観的に事跡を羅列した歴史とは違った意味の真実に気付かされる。ヨーロッパ統一という高い理想は、幾多の悲惨な戦争を繰り返し、EUの成立まで更に200年の歳月を必要としたのである。2013/12/23
でん
2
これは名作。長いけど一読の価値はあったと思う。天才がよってたかって潰されていく様、逆境になり次々と裏切られていく様は色々と考えさせられるものがあった2013/05/03
uburoi
1
下巻は2章に分かれるが半分はセント=ヘレナ、つまり最期となった流刑地でのことだ。6年間にしてはページ数が多いけれど第5章は半分がここにいたるまでの言説をまとめたいわばナポレオン論となっているためだ。セント=ヘレナにいても皇帝は語り続ける。文字通り最後まで。途中、イギリスではなくアメリカに助けを求めなかったことを反省している。しかし反省したのはイギリスの方だったかもしれない。第2次大戦中のドゴールはイギリスから激を飛ばすことでナチスに占領されたパリを取り戻したのだから。2023/12/10