内容説明
トロイア戦争は世に名高いが、戦争の発端の一部始終を伝える作品となると、『ヘレネー誘拐』が現存するのみである。一方、戦争最後の夜の悲劇に焦点を絞り、有名な「トロイアの木馬」の製作過程を詳述した作品も『トロイア落城』の他にない。クイントゥス作『トロイア戦記』と相互補完し、トロイア戦争の全容把握に不可欠な小叙事詩二篇。本邦初訳。
目次
ヘレネー誘拐(ペーレウスとテティスの結婚;黄金の林檎;イーデー山に向かう三女神;パリスの判定;スパルタを目ざすパリス ほか)
トロイア落城(十年戦争の浮き沈み;エペイオス、木馬を作る;オデュッセウスの作戦解説;木馬に乗りこむ戦士たち;テネドスに待機する船団 ほか)
著者等紹介
松田治[マツダオサム]
1940年、鹿児島県奄美大島生まれ。東京教育大学文学部卒業(言語学)。東京大学大学院修士課程修了(西洋古典学)。現在、つくば国際大学教授
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感想・レビュー
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ホームズ
12
黄金の林檎の事件はアキレウスの父親であるペレウスとティティスとの結婚式で起きた事件ですがその2人から生まれたアキレウスがトロヤ戦争で活躍するって時間的にだいぶ離れてる気がする。まあ細かいことは気にしない方がいいんですが(笑)2012/06/07
Doederleinia berycoides
2
木馬製作の細かい描写が興味深かった。2011/02/05
ホームズ
2
イリアスでなかった部分の話。「イリアス」程の面白みはなかったけど、興味がある話なので楽しめた。2007/11/01
belier
1
二つの作品とも、絵画の題材によくなったりする西洋文化の定番といえるお話。なのだが、大古典としては作品がなく、ローマ帝国時代のギリシア語文化圏で書かれた叙事詩だけ残っているというのが面白い。どちらも大枠のストーリーは知っている話だが、まとまった作品として読めたのはやはりいい。作家は二人ともホメロスとはかなり後の時代の人たちだが、古代ギリシア文学の香りがする独特な比喩がふんだんに使われている。そうした表現も久しぶりに楽しめた。また、この本は注釈が充実していて、ギリシア神話世界のよい復習にもなった。2022/07/19
ふたば
1
久しぶりに読んだら、あれ、こんなに笑えたっけ?ってくらい面白く読めた『ヘレネー誘拐』に、細かでさくさくした描写で目にありありと情景が浮かんでくるような『トロイア落城』。訳注と解説がなかなかの充実!訳注の言葉の選び方がツボだったりしてにやにやしてしまった。2014/12/03