内容説明
二十世紀半ば、王宮址の発見で実在が確認された中国最古の国家・殷。『史記』に描かれた伝説の王朝は、青銅器と墓跡の研究や甲骨文の解読によって、三千年余の時を超え、その姿が明らかになる。自然神信仰と祖先崇拝が示す王権の確立過程と脆弱さ。諸王の墓に葬られた殉教者が語るもの―。中国古代史研究の画期となった幻の名著。
目次
序章 殷代史研究の足跡―青銅器と甲骨文
第1章 殷の神々―王権を支えた観念(帝と自然神の祭り;祖先神への祭り)
第2章 複雑な国家構造と王権―王とは何か(王位継承をめぐる謎;王室をめぐる権力集団)
第3章 殷の社会構成―墓にみる社会の姿(王宮の秘密と住民の生活;死者たちのおごり;殉葬と斬首者たちの叫び)
著者等紹介
伊藤道治[イトウミチハル]
1925年生まれ。京都大学文学部卒業。京都大学人文科学研究所研究員、神戸大学教授等を経て、現在は関西外国語大学教授。専攻は、中国古代史
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感想・レビュー
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へくとぱすかる
30
義和団事件の年に発見された甲骨文字によって、『史記』に書かれた、殷王朝が実在したことが明らかになった。しかし果たして殷がどのような社会であったのか、資料の性質による制約上、必ずしも明らかにはなっていない。とはいえ、王や有力者が亡くなるたびに捕虜(?)を殺し、守備役として墓に埋めるような残酷な社会は、現代人には想像もつかない。秦の始皇帝が残した兵馬俑は、こうした生身の人間の代用を、陶器の人形にさせるという、ある意味、人命にやさしいやり方であったと言えるかもしれない。殷の『史記』によるイメージとの差は大きい。2015/05/08
しゃるorまい
1
殷という実在性がわりと最近まで疑われていて自分もどうなんと思ってた国のあり方がわかって古代中国に興味を持つことが出来たきっかけの本です。