内容説明
欧米人を支える「近代的自我」―それは日本人が夢見つづけた幻影だった。著者は、人間が本能の壊れた動物であり、「自我」とはその代用品として造られた幻想だと喝破する。それゆえに自我は、常に何物かに支えられずには存立できない不安定な存在である。そのラディカリズムにより、二〇世紀後半の日本の知に深刻な衝撃を与えた「唯幻論」の代表作。
目次
対人恐怖と対神恐怖
引き裂かれた人間
「甘え」の弁明
「卑屈さ」の研究
ふたたび自我の問題
「真の自己」
自我と欲望
自我の支えの否認
著者等紹介
岸田秀[キシダシュウ]
1933年、香川県善通寺市生まれ。早稲田大学文学部心理学科卒業。和光大学教授
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感想・レビュー
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海野藻屑
2
奇跡的なものほど奇妙な形をしている。ゆえに人はそれを畏れる。ただ奇跡と言うものは普段からそこにありその仕組みの中にわたしたちはいると思うのだけれど。2017/07/07
13km
1
日本は言わずもがなだけど日本のマネをするかの国の精神構造も照らし合わせるとすごく腑に落ちる。ジラールのいう内的媒介を通して日本はアメリカを欲望している。その欲望はアメリカにすれば普遍的なもの、グローバルスタンダードな国を目指す。日本はそれを他国から好かれる国となることとして目指す。そしてあの国はそんな日本のやり方を欲望しつつ、日本より自分たちのほうが先だ、優れてると言い、日本を憎悪し、恨む。内的媒介おそるべし。2013/06/12
Arowana
1
自己了解がまた変化した。自分のことは元来不可知であり、氷山の一角しか知りえないとしても自分を知ることは新鮮な発見だし、何せ楽しい。この本を読んでも、自身と向き合ってみた結果、自己評価が上がったわけでもないのだが、腑に落ちた瞬間気持ちは多少楽になった。なんだかんだ言って、自己愛人間なのだと改めて思った。2012/03/26
bossa19
0
発想や、現象の説明等大変興味深い。が、論のたてかたや証明のしかたなど、科学的とは言えず、納得するにはいたらない。理系的な発想、論理と文系的な発想、論理はやはり、根本から何か違うところに立脚している気がする。心理学と認知科学をつなぐものはないのだろうか。2003/07/20
でっていぅ
0
著者の作品の中では最も内容が濃いかもしれない、他と比較してもかなり体系的に語られている。しかし読んでいて疲れた。示唆的なことが多くあるけれど消化し切れなかった。再読するにも気が重たい。2011/09/20




