内容説明
敦成親王の誕生を中心に御堂関白家の繁栄を描く本書は、最盛期の平安朝宮廷の生活絵巻であり、作者の複雑な心境が吐露される貴重な文献でもある。紫式部は自己を冷厳に凝視し、憂愁に満ちた内面を語り、また、道長との歌の贈答、中宮彰子への新楽府御進講、和泉式部や清少納言などに対する辛口の批評も載せる。多彩な内容を盛り込む特異な日記を丁寧に読み解く。
目次
五節は廿日にまゐる―五節の舞姫
寅の日の朝、殿上人まゐる―殿上の淵酔のこと
かからぬ年だに、御覧の日の童女―童女御覧の儀
侍従の宰相の五節局―左京の君へのからかい
何ばかりの耳とどむることも―五節過ぎのさびしさ
臨時の祭の使は、殿の権中将の君―奉幣使の儀式のこと
師走の二十九日にまゐる―初出仕時に思いを馳せる
つごもりの夜、追儺は―夜の宮中の引きはぎ事件
正月一日、言忌もしあへず―若宮の御戴餅の儀
このついでに、人のかたちを―女房たちの容姿批評〔ほか〕
著者等紹介
宮崎荘平[ミヤザキソウヘイ]
1933年生。東京都立大学大学院人文科学研究科博士課程修了。博士(文学)。国文学(中古文学)専攻。現在、国学院大学文学部・大学院教授。新潟大学名誉教授
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感想・レビュー
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Mimi Ichinohe
5
五節の舞姫(押しも押されぬアイドル)を、倒れるのも無理はない…あんなに人に注目されて…と可哀そうがる紫式部。誰しも遠すぎる人の心をおもんぱかったりしない。紫式部は、自分が五節の舞姫側の人間だと捉えているんだろう。「年くれてわが世ふけゆく風の音に心のうちのすさまじきかな」老いを嘆く歌の「すさまじさ」は嵐なのかか細い風なのか、胸に響く歌です。下巻の好きなシーンは弘徽殿の女御に仕えていた人が五節の舞姫の付き人に身を落として隠れているのを見つけて「ばれてるわよ」っていう匂わせ手紙を送る場面。そういうとこだよ(笑)2022/07/18
ヨシモト@更新の度にナイスつけるの止めてね
4
読み物としては前半(上巻部分)の方が愉しいのだが、千年前の聡明で思慮深い独りの女性の、宮廷における立ち位置、来し方、人生観などがじんと伝わってきて、思うところ極めて大きかった。2016/09/09
ドウ
2
紫式部の日記の後半部で、若宮誕生の祝いの様子から己が出仕を始めた頃の回想、有名な清少納言など他の女房への「悪口」へと繋がっていく内容。断片的に読んだことのある文章も多く目新しさはなかったが、まあまあ面白かった。2015/04/25
catfist
1
途中までは上巻から引き続く「状況記録」だが、例の和泉式部・清少納言DISから内容が激変する、というか実質そこで終わっている。読む前は週イチくらいで嫌いな女をけなしてるのかと思ってたが、名指しで攻撃されたのは例の二人だけとは。最後の方は、バッサリ間引いたように寂しい有様で、なにやら謎めいている。本書はそこに魅力的な説を投げかけることは差し控えているので、もっと大胆な本も読んでみたいところだ。2021/12/14