内容説明
七五一年に編纂された日本最古の漢詩集『懐風藻』は、『風土記』『古事記』『日本書紀』『万葉集』と並ぶ国家創成時の貴重な史料、魅力満載の文学作品である。近江朝から奈良朝時代、律令制天皇国家樹立をめざした大友皇子、大津皇子、藤原宇合や遣唐留学生などの詩、新時代への讃美や清新溌剌とした若き気漲る佳品、百二十編の文庫版初の全訳注。
目次
大友皇子・二首(伝記)
河島皇子・一首(伝記)
大津皇子・四首(伝記)
釈智蔵・二首(伝記)
葛野王・二首(伝記)
中臣大島・二首
紀麻呂・一首
文武天皇・三首
大神高市麻呂・一首
巨勢多益須・二首〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しゅてふぁん
55
大津皇子を目当てに気になる人だけでも読んでみようと思って手に取ったが、結局最後まで読破。唐代の詩を読んでいるときのような高揚感や心に染み入ってくる感じが少なく、まだまだ日本の漢詩の黎明期といった雰囲気。でも中国の詩を模倣し近づこうという心意気を感じることができるのが嬉しい。‘単なる模倣は遊びの域を出ない(P76)’、‘古代的なごてごてした装飾を加えすぎた感じ(P202)’等々…解説が辛口で面白かった。この本は江口氏の解説と、たびたび引用される林古渓氏の解説を楽しむ一冊かもしれない(笑)2019/03/22
佐島楓
52
日本最古の漢詩集。上代文学の課題でなければ読んでいないだろう本。丁寧な現代語訳と注釈に助けられた。2016/04/13
やいっち
35
日本初の文学を意識した漢詩集。古代日本形成期の英傑たちが、やや背伸び気味ながらも、漢詩などの素養を身に付けようとしていた、懸命さのみなぎる「懐風藻」。これはこれで感じるものがあった。漢詩は、折々読む。背伸びしてもね。次は、「唐詩選」へ!2019/01/23
みのくま
12
最古の漢詩集という事もあり解説が結構辛辣。確かに万葉集と比べて面白くない。特に藤原史はつまらない。ただ息子の藤原万里(麻呂)の詩は好き。好きでいうと文武天皇の詩も良い。若年で国家を背負わされた重責を等身大で吐露する弱くも強いその御姿に感動する。懐風藻は当時のエリート達の詩が選ばれている。冒頭の大友皇子、大津皇子はある配慮が働いているだろうが、帰化人系の律令制導入の功臣たちや長屋王一派、のちの聖武帝の側近たちが目立つ。漢詩集なので当然女流作家はいない。その辺りも単調で退屈な詩集になってしまっている要因だろう2020/09/16
壱萬参仟縁
3
学問の大切さについては、「風を調へ俗を化することは、文より尚(ルビ:たふとき)はなく、徳に潤(うるほ)ひ身を光(て)らすことは、いづれか学より先ならんと」(27ページ)。現代語訳は「風俗を調え、人民を教化するには、学問よりまさるものはなく、徳を養い、身を立派にするには、学問より先に立つものはない」(28ページ)。福澤諭吉の『学問のすゝめ』の古代版を読むような部分があるのは驚きだ。2012/08/31