内容説明
『トロイア戦記』はホメーロスの『イーリアス』と『オデュッセイア』を架橋する壮大な長編叙事詩である。作者は三世紀のギリシャの詩人クイントゥス。『イーリアス』のあとを受け、アマゾーンの女王の華麗な活躍、戦争の端緒を開いた王子パリスの末路、木馬作戦の顛末、絶世の美女ヘレネーの数奇な運命等、魅力あふれる多数の挿話をちりばめつつ、トロイア崩壊までを描く。本邦初訳。
目次
アマゾーンの女王ペンテシレイア
メムノーンの悲運
アキレウスの最期
アキレウス追悼の競技大会
アイアースの自殺
エウリュピュロスのトロイア来援と勝利
アキレウスの嫡子ネオプトレモス
エウリュピュロスの死
戦線復帰するピロクテーテース
パリス散華
獅子奮迅のアイネイアース
木馬作戦
トロイア陥落
ギリシャ軍の帰国
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たみ
15
[イリアス]のその後からトロイア戦争終結まで。3世紀頃に詩人クイントゥスがまとめたものだそうで、元タイトルは[ホメーロスの続き][ホメーロス以降のことども]であったのを日本語訳文庫に際し[トロイア戦記]と題しています。アキレウスが唯一の弱点を討たれる、大アイアースが自殺、パリスの死、木馬の計、蛇に(子どもを)襲われるラーオコーンなど。美女ヘレネーはよく元のさやに戻れたなあ、と彼女の深い嘆きを読んでもしみじみ思う。オデュッセウスの好感度が何故かどんどん下降していく。老将ネストルさんの存在感!2015/03/02
ホームズ
12
『イリアス』後のトロヤ戦争の物語。トロヤへの援軍であるペンテシレイア、メムノーンとアキレウスの戦い。アキレウスの死後ギリシア軍を追い詰めるヘラクレスの孫エウリュピュロスの戦い。ネオプトレモスの参戦など面白い場面が続きますが『イリアス』ほどの力強さはなく全体的に淡々とした感じがしてしまった。2012/06/01
マッピー
9
例えば赤壁の戦いだったり、壇ノ浦の合戦だったり、物語の流れのなかで戦いを描いたものは、実は戦いそのものではなくてかけひきや各々の心情が書かれいて、そこが面白かったりするのだけど、これは本当に戦いのみ。しかも肉弾戦。神様たちもギリシャを応援するもの、トロイを応援するものに分かれていろいろ手を出してくるんだよ。人間は神様の駒じゃない!と腹立たしいことこの上ないんだけど、ひいきするんだよね、こいつら神様は。お気に入りだから助ける。気にくわないから殺す。義理も人情もないよ。神様だからね。ヤクザ以下だけど。腹立つ。2016/10/10
belier
7
ホメロス『イリアス』の続編となるが、3世紀の作品。木馬作戦までが他作品にない充実さで、主要人物の理解に役立った。人物の註が詳しいのも助かった。トロイア戦争の後日譚となるギリシア悲劇を読むのに役立つと思う。『オデッセイア』に架橋する作品とあるが、ローマ時代の人クイントゥスは『アエネーイス』につなぐ意識もあったのではなかろうか。作品としては、むかし『イリアス』を読んだとき感じた古典の高尚さより、大仰な娯楽作品という印象を持った。ただしこちらの読み方が変わっただけかもしれない。でも楽しく読んだ。2023/08/20
ミコヤン・グレビッチ
6
三世紀にクイントゥスが書いた叙事詩。ホメロスの時代から約千年後に出た「イリアス」の続編で、最後のギリシャ軍の受難は「オデュッセイア」へとつながる。アキレウスの最期、木馬作戦、終戦、その後とトロイア戦争の有名なエピソードがひと通り盛り込まれていて、お買い得感は十分。イマイチ垢抜けない独特の比喩も面白かった。ただ、古代ギリシャの勇者のセリフが、時として江戸時代の武士みたいな口調に訳されるのはちょっといただけない。アキレウスはアキレス腱を射られて死んだと思っていたが、本書では矢が刺さったのは「くるぶし」だった!2021/01/18