内容説明
平維盛の子、平家の最後の嫡流六代の斬刑により、「平家は永く絶えにけり」と『平家物語』は結ぶ。しかし、壇ノ浦の惨敗の後、都に帰還した平家の女性たちの血は、皇族、貴族の中に脈々と生き続け、実に現代にまで続いていることを忘れてはならない。北山の准后藤原貞子に仮託して、壇ノ浦以後の平家の動静を克明にたどる名著。
目次
序章 北山の准后(貞子の回想;源氏と平家(付記))
第1章 嵐の後(女院の還御;関東護送 ほか)
第2章 さまざまな運命(平家の侍大将;平貞能の東国落ち ほか)
第3章 平家の残党(平孫狩り;宗親と時実兄弟 ほか)
第4章 女人の行方(清盛の娘たち;女院の大原入り ほか)
第5章 北陸の空(時忠と能登国;時忠の末裔 ほか)
感想・レビュー
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夜間飛行
187
平家の落人伝説の99%は実証性がないとした上で、対馬の宗氏が平知盛の裔だという伝承は《偽系図の作者の考え及ばぬ》事柄や《吾妻鏡を知らぬ者には創れない》事柄を含むから本当だろうとしている。また奥能登の幾つかの旧家に残る家伝も、実際に平時忠が配流された土地だけにその子孫と認めてよいと。他には、平家の妻や娘が壇ノ浦後をどう生きたかという章が面白かった。反逆者の系譜として、奥羽征伐に功を立てた平永茂が満座の中で頼朝の御簾に背を向けて座った逸話も心に残る。彼は鎌倉に楯突いて敗死するが、越後平氏の抗争は続いたのだと。2023/03/09
Toska
17
散り際があまりに鮮烈すぎるためか、一般には関心を持たれることの少ない「その後の平家」の実態に迫った労作。壇ノ浦で囚われた人々がいつどのように都へ送還されたかというところから始まって、多くの史料を博捜しつつ大小様々なテーマに切り込んでいく。宗盛父子と重衡の死に様、家人・女性・僧侶それぞれの運命、苛烈を極めた残党狩り、各地に残る落人・落胤伝説の虚実、鬱勃たる野心を抱えながら能登に没した時忠、頼朝に敢えて尻を向けた越後の勇士・永茂…ポスト源平合戦の時代に、これほどのドラマが展開されていたとは。2025/01/21
fuchsia
2
平家物語に登場する人物、一族のその後。平家滅亡といいつつも一族皆殺しではないので男系女系結構な割合でその後の歴史に関わっていたのでした。また語り口がロマンチックというか失礼ながら厨二成分満載でそこが歴史ゴシップ好きにはたまりません。特に下巻、「悪逆非道な北条一族」への憤懣が溢れておりますが、幕府は朝廷と違い単なる統治システムコントロール機構なので、現在の会社組織で雇われ社長の首が飛ぶが如く将軍の首も切って捨てられますよ。平社員にとっちゃそんなことより今月の給料は出るか否かの方が重要なのは今も昔も不変さー2012/04/14