内容説明
ヨーロッパは、連年、蚕の病に見舞われていた。良質の蚕卵紙購入が動機で、通商を求め来日した、マジェンタ号艦長が綴る日本滞在記。開明的海軍中佐で地理学者の、西欧を代表する知識人が、日伊修好通商条約の交渉の準備から成立までの様子と「開国」に大きく揺れる幕末日本、江戸の庶民の生活や風俗を印象深く描き出す。
目次
交易の道を求めて
日出づる国
国際都市・横浜
幕府との折衝
庶民の生活
政治の状況
農業、宗教、風俗など
「貴国を辞す」
十九世紀欧州の日本認識
宣教師の足跡
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まーくん
92
幕末日本に通商を求めてきた国としては、米国を始め、英、仏、露くらいしか頭に無かったが、イタリアもペリー来航から遅れること13年、軍艦マジェンダ号を派遣し日伊修好通商条約が締結された。本書はその使節団長アルミニヨン艦長が著した日本滞在記。綱淵謙錠氏が前言を寄せ曰く、極めて良質な見聞記。当時の欧州人としては偏りもなく好意的に日本を見ている。彼の眼に映る幕府役人、江戸の庶民の生活や風俗など印象深い。ただ、欧州におけるような自由や市民的平等の理念は日本には決して生じえないだろうとの推察は、やはり根深い先入観か?2021/03/12
Ayumi Katayama
23
親が、自分の幼少のころのことを話すのを聞いていると妙なくすぐったさを覚える。そんな読書だった。著者が日本を訪れたのは幕末。大政奉還の前年である。文明も遅れていたし衛生的にも劣っていた。そういうことも率直に書かれてはいるが、しかし決して見下したり蔑んだりするような言葉は見受けられない。純粋に見て聞いたことを著者の目で記録した。『下層の人々が日本ほど満足そうにしている国は、ほかにないと言えるだろう』という言葉が印象的だった。2021/02/27
mahiro
12
幕末に日本を訪れたイタリア人の見聞記。イタリアも様々な争いをへて漸く一国として統一されたあたりか、日本に対してはわりと好意的だ。家定から家茂の死あたりまで滞在していたようでその時の日本の情勢が外国人目線で描かれている、日本の歴史もよく勉強しているようだ横浜や下田の風景や当時の町並み人々の風俗など面白かった。2017/04/14
ホークス
4
幕末から維新にかけて日本を訪れた外国人の著書の中で、この本はイタリア人によって書かれた。長年他国に支配され、ようやく統一を果たしたばかりという国情が、色々な形で現れている。日本が他国に遅れをとっている事に同情しつつ、他方では、自国がヨーロッパ文明の一員である事に強くこだわっている。一方、著者の姿勢が基本的に誠実で反権威的な事も特筆すべきで、それ故、時代的な勘違いや偏見を言い立てるには及ばないだろう。結果この本は、人間と、人間を支配する文化文明の関係を考える、良いテキストとなっている。2014/08/03
May
2
幕末期に日本を訪れた(日本着は1866年)イタリア使節が著した「1866年の日本及び軍艦マジェンタ号の航海」の抄訳。長州征伐のことなど、Warに関連したことも若干ながら触れられているが、基本的には日本の風俗やらがメインとなっている。幕末期の日本がどのような国であったのかを知るための資料として活用すべき本。