内容説明
待降節・復活祭・万霊節と生活に豊かな彩りを添えるキリスト教の四季の祭―その中には多神教で土俗的なケルトやゲルマンの遺習が脈々と息づいている。ウォーダン、ペルヒタなど、ゲルマンの魔群や精霊のその暗き世界に、希望と光、祈りと願いの結晶としてキリスト教がはりい込む。本書は、年間行事の紹介を通して、西様文化の深層を明らかにした労作である。
目次
冬の光と闇
冬と夏の争い
夏の歌と踊り
秋の収穫の喜び
冬と眠りと安らぎ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夜間飛行
72
ウォーダンとその眷属が冬の荒々しい風と共に訪れ、ファストナハトの魔女は山羊皮を被る青年達と踊り狂いながら夏の生命力を呼びこむ。このように祭の神は自然の荒々しい力を象徴するわけだが、キリスト教はそこに別の意味を見出した。例えば幼子を伴ってエルサレムの神殿を訪れたマリヤが、将来わが子を神に捧げる運命を知りそれを受け入れる決意をする「マリヤの光のミサ」は、冬に対する夏の光の勝利に重なるという。他にも聖人聖女の受難劇や聖霊迎え或いは聖体拝受など、愛と命を讃える祭をもし失えば、人の生の源泉は涸れ果ててしまうだろう。2018/04/12
クナコ
10
初読。前々から気になっていた本。主にゲルマン系のヨーロッパの四季の祭事について紹介する。紹介内容が年末から始まり冬に終わるので、読み出す時期を伺っていた。たまに耳にするキリスト教的な祭事を紹介するだけでなく、それらの前身となる土着の風習や古代宗教、土着の伝説などとても根深く解説している。個人的にはゲルマン神話と北欧神話の区別がついていなかったので、ヴォーダンとオーディンの違いなどを間接的に学べてためになった。全体に怒涛の情報量で、地域も時代もかなりばらけているので祭事の紹介内容にただ圧倒され続けた。2024/12/16
shou
2
季節を追って辿る、ゲルマンの土着信仰とキリスト教の融合の様。風土に根付いた習俗は容易には変わらないものらしい。むしろペストの流行など宗教以外が与えた影響の方が強烈。2012/11/16
更新停止中
1
「ヨーロッパの」というよりは「ゲルマンの」か。土着信仰としてのカトリック。「土人」ではない「民族」などいないし、いて欲しくもないと思う。生きていかねばならない土地と風土と共同体とか、どんな思想も信仰も、そういうものから多分完全には自由になれない。欧州北方の風土の中における「冬の終わり」「太陽」「光」の概念が、現代のキリスト教をどれだけ支配していることか、とか。2011/02/16
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