内容説明
ドイツのカイザーの王子たちを教育した英国婦人E・ハワードは、明治三十四年日本に招かれ、元薩摩藩主島津家の五人の子息の教育を託された。本書は、その興趣溢れる養育体験記であり、激動する明治のすがたを伝える回想記でもある。また、当時の上流社会の家庭の様子と日本の風俗や日本人の気質が愛情こめてほのぼのと語られる。
目次
日本に来て
公爵と四人の弟たち
顧問と使用人たち
通訳、食事、買い物など
子供たちとの生活
学習院
道路と交通
お茶と雛祭り
関西旅行
日光、箱根、鵜飼い見物
日本の家屋
日本のキリスト教
日本人と刀
日露戦争
戦勝祝賀会と暴動
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
isao_key
6
エセル・ハワードは1901年に島津忠公と弟3名の家庭養育のために来日する。その役割は英語の家庭教師だけにとどまらず、同居し生活指導や躾などにも及んだ。本書の解説「著者ミス・エセル・ハワードについて」を読むとただ話せるようにするのではなく、上品な発音と英国上流階級が使う英語を習得させようとしていたのが分かる。また日本滞在が7年にも及んだこともあって、日本人の習慣や心情を深く的確に理解していた。例えば日本人の慎み深さについて、日本人の愛国心とあわせて日本を世界で最も優秀な国の一つに発展させたと分析している。2013/02/28
hitsuji023
2
元薩摩藩主島津家の五人の子息の教育を託された著者の見聞録。その当時の日本の様子が著者の目を通して見えてくる。地震や津波という言葉が出てくるあたりは今も昔も自然災害の多い日本を感じさせる。そして、特に日露戦争について書かれた部分が興味を引いた。戦勝に沸いた姿や、思いのほか得る物がなく暴動が起きた日の様子、その暴動がすぐに鎮静したことなど興味深い。戦後、その戦地へ実際に行く行動力も備わっており、随分行動的な人だと思った。英国式の海軍とドイツ式陸軍の違いなどはもっと他の本などでも詳しく知りたいと思った。2015/02/26
月
1
★★★★☆(再読/ドイツ皇帝ヴィルヘルム2世の皇太子とその弟妹の英語家庭教師を務めたイギリス人女性E・ハワードが、明治時代・日露戦争を挟む7年間、元薩摩藩主島津家の5人の子息(長男忠重・公爵と4人の弟)の教育を託されたその養育体験記兼回想記。通訳・食事・買い物から学習院、道路と交通、お茶と雛祭り、日本の家屋、日本のキリスト教、日本人と刀、日露戦争、朝鮮・中国旅行、日英の習慣の違いほか興味深い内容が収録されています)2009/09/15
シンドバッド
0
講談社学術文庫には、外国人による明治期の見聞録が多数あり、いずれも良い。2004/09/16




