内容説明
真の絵画芸術には哲学的思想が内包されている。真理を追求する画家たちは、一枚の絵の中に自己のすべてを表現しようとするからだ。本書では、『死の舞踏』『最後の審判』『ゲルニカ』『原爆の図』など古今東西の多くの名画を通して、そこに暗示された「死の思想」の探究を試みる。哲学における最大のテーマというべき「死」の意味とその本質を、画家たちの研ぎ澄まされた魂はどのように描いたのであろうか。
目次
序章 絵画芸術と『四終』
第1章 『死』の哲学絵画
第2章 ミケランジェロと『最後の審判』
第3章 『地獄』絵画の世界
第4章 『天国』絵画の世界
終章 芸術における『知』の哲学
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
午後
3
生者を捕らえる死を描いた絵画(p.24-25)、死の舞踏(p.26およびp.74)、最後の審判図(p.107)、香月泰男のシベリアシリーズ、丸木夫妻の原爆の図、浜田知明の銅版画など、死を描いた美術作品の作例が豊富に提示されていて、勉強になる。一方で「死の哲学」と呼べるほどの思考の深まりは見られず、一般論を引き写したような断定的な記述が鼻につく。2022/03/30
ちまりん
3
もし、ほんの少しでも死後の世界を垣間見ることができたら、人はどう思うのだろう。希望を抱いて現世で善行を積むのか、絶望で肉体という牢獄に執着するのか。いずれにせよ、生きている人間にとって、死とは未知の領域であり、だからこそ恐怖もするのだろう。後半は、私の知識が及ばずついていけない部分もあったが、面白かった。前半は知っていることがほとんどだったが「ほぅ……」と感心できる部分もあった。哲学の知識が白紙に近い状態なので、それ関連の本を読めば後半も理解できるだろうか。2011/11/17
影実
1
古今東西の多くの名画を通して死の思想を探求するという割には、ヨーロッパの絵画に比重が傾きすぎている。画家に対する精神分析もしすぎ。2009/05/11