内容説明
中国最後の分裂時代、北族王朝の盛衰の中からチンギス・カーンはモンゴル帝国を建設・功臣・耶律楚材の改革を経てフビライの元が史上初めて征服王朝として中国を支配する。しかしモンゴル至上主義への反発から漢民族国家・明が興り、永楽帝による北方遠征や「鄭和の西洋下り」などで栄光の中華帝国を築く。豊富な史料をもとに英雄、皇帝たちの実像と歴史に翻弄された人々の姿を活写する五百年史。
目次
第1章 モンゴル前史―北族王朝の系列
第2章 モンゴル帝国の属領支配時代
第3章 世祖フビライ・カーン
第4章 元朝の中国統治
第5章 元朝の経済政策と経済事情
第6章 元朝の社会と文化
第7章 元朝の末路
第8章 中華帝国の復活―太祖洪武帝
第9章 簒奪劇の主役―成祖永楽帝
第10章 守成の時代
第11章 紫禁城の斜陽
第12章 変貌する社会
第13章 落日の老帝国
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
coolflat
21
四ハン国の元だけが中国化した理由。トゥルイ家のある特殊傾向による。モンゴル慣習では末子相続とされており、チンギスの領有するモンゴリア本国は末子トゥルイが受け継ぐはずだった。ところが三子オゴタイが二代ハーンを受け継いだため、ハーンでありながら本国を直接支配できない不都合が生じた。この矛盾を調停するためにトゥルイは自分の権利を放棄し、代わりに漢地が宛がわれた。北方草原に所領を持たなかった結果として、定住社会に対する強い関心が生まれた。モンケ、フビライが南方定住地域(=南宋)に異常関心を示したことに一端が見える2020/01/21
Hatann
9
元と明の時代を素描する。燕雲十六州割譲から始まる征服王朝の華北支配は約300年ののちにモンゴルに引き継がれる。明の猛攻によりモンゴルが撤収するまで約430年ものあいだ異民族の支配が続いたことになる。永楽帝が南京から北京へと遷都することで政治と経済の中心地が分離する体制は継続した。モンゴルを想起させる拡大主義の永楽帝ののちに守成の時代に入る。官吏の意向を尊重した税量の銀納化は農民生活を圧迫した。明は農民反乱により内部崩壊する。通俗文学など大衆文化が発達するともに、農民の穀物以外の商品生産・副業が多様化した。2020/03/09
ポルターガイスト
6
長年積まれていたが読めた。初版が1974年なので(特にモンゴル部分はオゴタイ・ハン国とかあって)古さが否めないのと,元明の接続性・断絶性を意識して描くようなことを前書きで言っておきつつ別にそうでもないことがたまに傷。しかし,元部分は文体がとても格式高く,明部分は物語性のある優しい語り口で,初心者向け全集の一冊としてとても手堅いよいつくりをしています。古き良き歴史本という印象。これをベースに最新の近世アジア史研究の成果を乗せていく位が高校世界史教師にはいいんじゃないかと思いました。2020/03/21
韓信
3
モンゴル前史としての遼金から説き起こし、モンゴル帝国と明の沿革を描く概説書。杉山正明以前の「中国史」の枠組み内で終始する点や、元明ともになぜか軍制への言及に乏しい点など、内容の古さや不満点もあるが、著者2人がともに文章達者で、政治・社会・法制・文化など叙述のバランスがとれていることもあり、入門としては良書。個人的には漢人世侯の支配や明代の多様な民衆反乱に関する叙述が多くて嬉しい。モンゴルの支配による文化水準の低落によって、士大夫層と民衆の文化が接近し、明代で陽明学の影響下に大衆文化が花開く流れも解りやすい2021/06/24
りょーへい
2
2月23日から。今年の11冊目。通常、この時代は宋元と明清に分けるのですがこの本は元明とわけております。「共通点なんて無いんじゃ…」と思いがちですが意外にあるんです。例えば、異民族国家(漢民族からモンゴル遊牧民が略奪し「元」、モンゴル遊牧民から再度、漢民族が奪う「明」)など政治、文化など細く連綿されています。気になる方は是非、一読して頂きたいですが少し古い本ですので色々考えてみて下さい!2015/03/04