講談社学術文庫<br> 野生のうたが聞こえる

講談社学術文庫
野生のうたが聞こえる

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ 文庫判/ページ数 370p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784061593015
  • NDC分類 468.04
  • Cコード C0198

内容説明

あるがままの自然への慈愛と共感、失われゆく野生への哀惜の情をみずみずしい感性でつづり、自然が自然のままで存在しつづける権利や、人間と生態系との調和を訴える先駆的思想を説く。そのしみじみとしたエッセーがソローの著作とならび称される一方で、自然との共生の思想により環境保全運動を支える役割をになってきた本書は、環境倫理の確立が強く叫ばれるいま、必読の古典的バイブルである。

目次

1 砂土地方の四季(一月・一月の雪解け;二月・良質のオーク ほか)
2 スケッチところどころ(ウィスコンシン;イリノイとアイオワ ほか)
3 自然保護を考える(自然保護の美学;アメリカ文化における野生生物 ほか)

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

アナクマ

27
レオポルドは環境倫理学の祖。「土地がひとつの共同体であるということは生態学の基本概念だ」原著49年。初訳86年。文庫化97年。新版24年。1-2部の自然体験エッセイから3部の哲学的問題へ。◉「個人とは、相互に依存しあう諸部分から成る共同体の一員〈平凡なメンバー〉」であり、その輪を「土地にまで拡大した場合の倫理」、倫理則の範囲を問う(無人島ひとり暮らしに環境配慮は必要か?問題)「物事は、生物共同体の全体性、安定性、美観を保つもの…でない場合は間違っている」という総体主義について。解説3篇も良いガイドです。2025/01/21

アナクマ

18
1章11節_人間は「最初の基本的な二つの道具(シャベルと斧)」を使いこなすという意味で「創造と破壊という神聖な能力を備えている」。ここで示される自然保護論者の定義が面白い。それは〈実際に斧をふるうとき・切る木を決めているとき〉に判断されるべきであり、〈木を切らない者〉ではないという点が重要に思える。例えば、松と樺のどちらを重用するか。各人が、それぞれの偏見/贔屓をもとに、その斧の一振りが大地に刻むしるしを「謙虚に悟っている者」であれ、と言う。解説に「長い射程を持った人間中心主義」といわれる所以だろう。2025/01/31

アナクマ

15
3章4節_土地倫理〈あなたが所属していると思える共同体に、土地も含めなさい〉という主張。「歴史上の出来事の多くは、人間と土地との、生物を媒介にした相互作用の結果だった」のだし、「牛を草のところへ連れていくのではなく、牛のほうに草を持っていってやる」くらいの工夫は必要だ。「商売にならない樹木も共同体の構成員として認められ」るべきなのに「土地の保全措置を自発的に実行する気配はほとんど見せない」。…という部分を焚き火のとなりで読む。2025/05/19

しまゆう

4
「土地倫理」の提唱者である著者。共同体の概念を土地、つまり生物相全てを包括したものへと拡張していく。しかるに倫理の対象も伴って拡張していくというもの。それが土地倫理(ランド・エシックス)。自然保護を保護者、被保護者の二項対立で捉えずに、脱人間中心主義の嚆矢となっている。非常に読みやすい語りかけで、エッセイとしても良い。挿絵のスケッチが美しい。2015/12/18

壱萬参仟縁

3
「人間は、ほかの生き物たちと同じく、共に進化という遍歴の旅を歩む旅人の一人にすぎないということである」(176ページ)ということは、当たり前のようでいて、実は、できていないので、原発事故を収束できない。他の動植物にも放射能の影響を及ぼすのだから、自然との共生はできない。時折でてくる小鳥たちなどのスケッチが非常に繊細である。自然区域に稀少価値があるということ自体が、宣伝と開発を促し、努力を台無しにする(269ページ)という逆説もあり、世界遺産制度もそうした性質をもつことを考えておきたいと思える。2012/08/07

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/110980
  • ご注意事項

最近チェックした商品