内容説明
コレラ、ハレー彗星、千里眼、毒婦お伝…明治から昭和へ、激動の日本に生まれては消えた噂、デマ、迷信。人々の欲望や不安をのせて広まり、時には凄惨な事件までひき起こした様々な噂の驚くべき正体とは。情報機器が発達した今日においても依然として事実と噂の境目が曖昧な状況を踏まえて、噂を生み出す「時代の仕掛け」を問い直し、あざやかに近代日本を透視した庶民精神史。サントリー学芸賞受賞。
目次
兎、コレラ、絹布そして唄
毒婦たちの栄光
鹿鳴館と任侠
世論と壮士
妖怪学と失念術
超能力の発見―千里眼事件
芸術か、スキャンダルか
コラムの誕生と消滅―「茶話」の時代
天譴、自警団、この際やっつけろ
英雄生存伝説と日本起源論異説
“清潔な帝国”下の『日乗』―荷風と昭和初期
デマと統制―木炭もない石炭もない
“清潔な帝国”と敗戦
“地”のうわさ、海の記憶
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
浅香山三郎
11
うわさを材料として日本近代を捉へ直すといふ評論。社会が近代化してゐるにも拘らず、荒唐無稽なうわさは絶へず発生し、内容を変容させ、成長する。さうした背景にある人びとの不安や欲望を読み取る本書は、コレラ・毒婦・任侠・壮士・超能力・義経伝説など多岐にわたる現象を扱ふ。近代社会の中で、体系的に世界を把握しやうとしながらも、超科学的な言説に未来の可能性をみたり、関東大震災の朝鮮人虐殺の下地になつた流言蜚語や、義経=ジンギスカン伝説に帝国日本の自己肥大をみたりと、情報過多の世の中で、幻惑される人びとの姿は昨今と↓2022/01/15
ハチアカデミー
10
B 明治・大正・昭和の日本に広まった荒唐無稽な噂の数々。隣人が語る噂話は、メディアの発達によってより広まり、話も大きくなり、また数々のヴァリエーションを持つようになっていく。しかし、噂の構造はずっと変わらない。不可解なもの、理解しがたいものを言語化する過程で噂は生成されるのである。時代を写す鏡として噂を考察することで、日本の戦前戦後史を新しい角度から描くことに成功している。当時の新聞や雑誌記事、広告などを取り上げるとともに、苦々しい眼差しで社会を描く荷風とロッパの日記など、もろもろの文献にもふれられる。2012/12/13
ポン・ザ・フラグメント
0
3.11で流言飛語に人が踊らされず関東大震災の轍を踏まずにすんだのは、昔とは個人が手に入れられる情報の量と質が圧倒的に違うからだという話を聞いたことがあります。どうなんでしょう。それ以前に日本人のアタマがよくなったって考えちゃダメですか? この本を読むと、関東大震災のときは天譴(天罰)だとする意見が結構あったようです。今回は少なくともそう言った人が批判されていましたからね。日本人も少しは成熟したってことにはならないんでしょうか。2012/11/22
pochi11
0
▲2009/07/31