内容説明
「天使についての哲学的な書物は、出版の歴史における大事件である」―アメリカの現代哲学の第一人者として幅広く活躍を続けている著者が、天使を偉大な思想として捉え、信仰からだけでなく哲学や現代思想の領域から「肉体なき精神」である天使と人間精神を考察する。一貫して神の存在を哲学的に論証し、神への信仰を理性的に根拠づけた、魅力あふれる天使学の最良の入門書。新訳の文庫オリジナル。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
磁石
23
「生きたい」想いを叶えるために集まってくれた「生かしたい」、それらの集合体/物質化したのが肉体、ソレを必要としていない知性体/誰かの想いを叶えるための純粋なエネルギー体。誰もが天使に憧れるのは当たり前だろう、ご招待したら箱に詰めるか首輪をつけて逃がさないようにもしたくなる。ソレが極まってか、肉体が不要/牢獄とまで言ってしまうのは、彼らの基点の想いが「生きたい」ではなく「滅びたい」に傾いているからだろう。そんな彼らが「そう在りたい」のなら「滅ぼしたい」になってしまう。……天使と悪魔は視点の違いで変わる。2017/10/30
磁石
3
信仰や宗教と縁遠い私には、「天使」というと、人に白い羽のようなものがついた姿を連想するだけだが、著者はそれを思索の対象とした。まず、宗教的な熱情持っていない人の立場から、天使の存在可能性を説く。それを、神と人との中間に位置する「肉体なき精神」、「宇宙外の知性形態」と論じた。そして、天使の概要を掴むと、今度は人との違いを明らかにしていく。人は、肉体という牢獄に封じ込められた天使ではない。その知性はどうしても肉体を必要として、それゆえに不確定で限界がある。中庸を求めてしまう性は、人だからこそなのかもしれない。2013/06/11