内容説明
十八世紀英国の資本主義勃興期に、「見えざる手」による導きを唱えて自由主義経済の始祖となったアダム・スミス。彼は手放しの自由放任主義者ではなくフェアな自由競争を主張し、『道徳感情論』では利己心の自制を説き、『国富論』では政経癒着による独占と特権を批判した。現代日本社会が抱える問題点にも鋭い示唆を与えるスミスの思想の核心とその生涯を、豊富な資料を駆使して第一人者が説く必携の書。
目次
第1章 少年時代
第2章 青年哲学者の活動
第3章 『道徳感情論』
第4章 フランス旅行
第5章 『国富論』の世界
第6章 晩年と死後
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
うえ
7
スミスの渡仏時におけるヒュームとの交友と、エピソードが豊富。「1765年十二月なかばに、ジュネーヴからパリについたスミスは、そこに翌年十月まで滞在する。親友ヒュームは、大使の秘書として63年十月からパリに勤務していたので、スミスを学界、社交界に紹介することができた。ヒュームは、処女作のみじめな失敗にもかかわらず、このころには「哲学者はパリの王であったが、ヒュームは哲学者の王であった」といわれるほどになっていた。スミス自身も、『道徳感情論』のフランス訳が1764年にでて、名を知られはじめていたのである。」2022/11/10
Francis
3
日本のスミス研究の第一人者によるアダム・スミスの伝記・入門書。国富論だけでなく、スミスのもう一つの主著「道徳感情論」についても取り上げられていて、彼の思想がバランス良く分かるようになっている。著者が「おわりに」に書いている「スミスは手放しの自由放任主義者でなく、自由競争に内在するルールを想定していた。」と言う言葉に尽きると思う。2014/07/02
おらひらお
2
1997年初版。難しい本を読むときは著者の伝記的本を読むことにしていますが、本書は著者の生涯と国富論が書かれた過程等がうまく絡んで読みやすい一冊。2023/03/12
馬咲
2
アダム・スミスの生涯を紹介しながら、経済理論で有名な彼の本質があくまで道徳哲学者であることを強調し、有名な「神の見えざる手」「自由放任」といった言葉に代表される『国富論』の理論は、彼の最初の主著『道徳感情論』で分析された人間本性を踏まえたルールの存在が前提となっていることを示している。『国富論』についての適宜批判を加えながらの概説も手厚いが、とりあえず『道徳感情論』の概説を読むだけでも、現代の新自由主義(特に日本のそれ)がスミスの考えとは如何に乖離した理念であるかを察することができる。2022/07/21
numainu
2
評価D2017/02/08