内容説明
本書は15世紀末の地理上の発見が触発した商業革命から17世紀の初期資本主義の完成までを論述。中世後期の東邦貿易の支配者ヴェニスは、東インド新航路の開拓によりポルトガル、スペインにその座を奪われ、さらに新興国のオランダ、イギリスが新大陸貿易の主要品「毛織物」の生産地として台頭する。転換期における大国の興亡と資本主義成立過程を説く名著。
目次
前編 近代欧州経済史における毛織物工業の地位(商業革命と毛織物工業;オランダ及びイギリスの興隆と毛織物工業)
後編 毛織物工業を支柱とするイギリス初期資本主義の展開(イギリス初期資本主義における毛織物工業の地位;イギリス初期資本主義の支柱たる毛織物工業の経営形態;イギリス「初期資本主義」の型)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
sk
1
近代資本主義の成立を史的に解明。大塚歴史学には独自の鋭さがあって、読んでいて楽しい。2016/03/12
ぽてと
1
国王の名前がすべて英語名になっているので、一瞬誰だろうと思う場合があった。もっとも文自体平明であり、大塚歴史学の入門書として優秀かもしれない。2015/05/17
はだにいいらしい
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プレイログみたいな感じ2012/04/13
aki
0
相変わらず、めちゃくちゃおもしろいなあ。導入部は東洋貿易の支配者だったヴェニスがインド航路を発見したポルトガル、スペインに、その座を奪われ、続いて新興国のオランダ、イギリスが台頭。新大陸貿易の主要商品である毛織物の供給拠点として飛躍的に成長していく過程が描かれる。両国の特徴は毛織者の生産地でもあったこと。後半は主にイギリスを舞台に毛織物の生産・流通の主役が「都市の織元」から「農村の織元」へと移り、「農村の織元」が初期資本主義の主役となっていく過程を追っていく。オランダ衰退の理由も明らかにしている。 2025/04/02
ふら〜
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前半では新大陸との貿易、そして欧州における経済覇権を握る上で毛織物工業が重要な要素である(東インドの香辛料を取り寄せるのに、南独のちに新大陸の銀が必要。その銀を得るには毛織物の輸出が鍵)と述べ、後半では毛織物工業の覇権をなぜイギリスが握ったかを解説。問屋制家内工業を主導していた「都市の織元」から、エンクロージャーも相まってマニュファクチュアでより効率的に生産できる「農村の織元」への移行が上手くいったこと、それが産業資本となり将来の産業革命に繋がったとする。良い復習になる。2023/05/10