内容説明
キリスト教神学の基礎を築いた古代ローマ末期の教父・アウグスティヌス。その青年時代は、放蕩無頼だったとする通説を、筆者は名筆『告白』の鋭い読解により覆し、子供までもうけて離別した内縁の女性こそ、アウグスティヌスに最も大きな影響を与えた人物と説く。「創造と悪」の章では、アウグスティヌスと道元の思想の共通点を指摘し、キリスト教と仏教の接点をも示した。キリスト教理解のための必読書。
目次
第1話 アウグスティヌスと女性
第2話 煉獄と地獄
第3話 ペルソナとペルソナ性
第4話 創造と悪
第5話 終末と希望
第6話 神の憩い
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ネギっ子gen
44
新聞書評を読んで速攻購入するも「まえがき」の後はチラ見をしただけで、後でじっくりと読むべき本、と長く休眠状態になっていたが、今回漸く完読。それにしても、我ながら後日を期してってパターンが多過ぎ(と慨嘆)。さて、本書。京都学派人脈の中にいる人らしく、仏教関連の言及多し。道元禅師との類似性指摘は、成程と。で、読んだ感想。うーん、やっぱりアウグスティヌスは難しかった。ま、それは分かり切っている話でして、より理解を深めたければ、直接原書とはいかずとも、せめて『告白』『神の国』の訳書くらいは読み込まないとねぇ……⇒2020/05/13
松本直哉
25
創造と悪の問題をめぐって、道元を引き合いにだして、米一粒を洗うような小さな行為が全世界を洗浄することにつながると述べる禅僧と、イエス・キリストに倣って生きる我々もまた神の創造の業に参与していると説くアウグスティヌスの比較が興味深い。なぜ悪が存在するか問うのは傍観者の立場。世界の中に自分が投げ込まれて行為することで世界は変わるのだという。人間の環境破壊のせいでかつてない勢いで生物が絶滅しつつある今の時代に、どれほど説得力を持つだろうか。神の作ったものを片っぱしから破壊しているとしか思えないのだが。2020/07/22
マウリツィウス
13
【論点趣旨『講話』】教父アウグスティヌスにおける対話意義を見出せる好著だが新約聖書書簡における対義語性を甘受してはならない論点を求めていく際に必要事項を要約する意味がある。つまり「講解内講話」形式。古典ギリシャ文明により設立された「偽装福音書呼称」利用に対して可能だった反駁とはヨハネ福音書の単独性のみだと主張する著者は独立態勢にある記述論法をラテン語の特殊性と指摘していった。伝統と忠実の重大目的を果たす境界書をも否定するグノーシスに対し教父は最上位反駁=ヨハネ黙示録忌避性反転に異端文書を引用する逆転反駁。2013/07/03
さえきかずひこ
12
京都北白川教会で1973年に行われた講話6篇がのちに雑誌『共助』に掲載されたものをまとめている。後半の5〜6話はほとんど思いつきを話しているだけで質が低いが、三位一体論における東西教会の聖霊の位置付けの差異にアウグスティヌスが及ぼした影響を解説する3話、またアウグスティヌスとその信仰の変遷を実存的観点から分析し、道元の思想と比較して語る4話は読む価値が高い。とくに、父・子・聖霊の関係でいちばんつかみにくい聖霊の理解のヒントを得られた3話は心に残った。アウグスティヌスにやさしく入門したい方におすすめします。2018/08/11
はら
11
本書の内容としてはアウグスティヌスを通したキリスト教再解釈というものだと受け取ったが、正直、自分は宗教的な解釈とかではなくその宗教がどのようにして生まれ、その宗教が世界にどのように影響を与えていったのかといった宗教史的なものに興味があるということと、聖書の解釈というものは正解なんてなく妥当な解釈があるだけではと思ったこともあり、読んでいて退屈に感じることが多かった。さらに言うと、後半で特に顕著だったことだが、強引な一般化(日曜日についてとか)が多いと感じ、それがまた読む気を失せさせる理由になった。2018/09/30