内容説明
一般に民間で行われている宗教現象は民間信仰とよばれており、日本人の生活に深く浸透している。民間信仰は日本人が諸宗教を摂取する枠組となっており、著者はこれを民俗宗教と捉える。本書は、従来、個々に解明されてきた民間信仰を、宗教学の視点から体系的に理解するため、その鍵となる原風景、歴史、儀礼、物語等を解説し、民俗宗教の中核をなす死と祖霊化の問題を考察した待望の入門書である。
目次
第1章 民俗宗教とは
第2章 日本人の原風景
第3章 民俗宗教の歴史
第4章 民俗宗教の儀礼
第5章 民族宗教と物語
第6章 民俗宗教の図像
第7章 民俗宗教の宗教的世界観
第8章 祖霊化と仏教―人と神のはざまで
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
井月 奎(いづき けい)
35
私は日本人の宗教的節操のなさを心強く、また好ましく思っていました。単純な頭の私は日本人のアニミズム的宗教思考、思想によってそうなったのだと思っていましたが、そんなに単純なものではありませんですね。アニミズム的な宗教観がいろいろな神仏に聖性を見つけ出す基礎となり、仏教の季節と感応したしきたりや儀式が生活とよくなじんだことによって生活者の宗教、この本でいうところの「民俗宗教」が生まれたのでしょう。宗教観に広がりを持たせてくれる良書でした。2023/09/25
mittsko
7
宮家先生が物された宗教民俗学の概説書のひとつ。宗教人類学(ないしは宗教現象学、比較宗教)の各種理論を各所で用いることで「日本の民俗宗教」を解説していく。全人類的な民俗世界とその日本列島版という普遍/特殊図式なんだろう。さらに、論考各所での図式化志向もつよく、おかげですっきりとした味わい。まさに入門書。 ※ 日本宗教論で本当によく見られることだが、本書でもやっぱり儒教への言及がほほ皆無だ…(´・ω・`) これは大きな瑕疵であり、目下研究が進行中のところ。一方、道教や風水への言及はしばしば2023/10/07
ふふろ
2
日本の民俗宗教について、民俗学、宗教学の見地から概説的に記された一冊です。 これまでの日本の宗教的儀礼の起こりは史実やテクストに基づく事実関係によって事細かに解説されていたので説得力がありました。 ただ、著者自身の主張である、現代の日本人の宗教観、原風景観について主観的な論調があり少し疑念が残りました。 ムラやクニが滅亡しつつある現代日本で、新たな共同体が現れない限りは、根拠を持っておこなって来た数々の儀礼は形骸化し、日本人の民俗性も空虚になるような気がしました。2021/01/24
まのん
2
p.186の「…ちなみにわが国最古の仏像は、光を放った楠の流木に刻まれた吉野寺の放光仏である。…」ってのが気になって検索しても、うまくひっかからない…。2013/12/28
風太郎
2
古くから積み上げられ、「日本」という地域に形作られた宗教観について述べられた本です。でもそれだけではなくて、民俗学全体の概観をも示してくれています。柳田国男の本を何冊か読んでいたのですが、この本を読んでからにすれば、もう少し理解が深まったかもと思えました。また、最後の付章は日本の民俗学がどのように発展してきたかが書かれてあり、付章に載せられている学者を順に追っていけば、民俗学を体系的に学ぶことが出来るように思われます。2017/06/18