内容説明
一九四五年、エジプトで写本が発見され、「新発見の福音書」として世界にセンセーションをまきおこした。〈トマスによる福音書〉―異端として排斥されたグノーシス派の立場から編まれた一一四のイエスの語録集である。新約聖書学・グノーシス主義研究の世界的権威がその語録を精緻に注解し、独自の福音を明らかにした本書は、従来の「正典福音書」のイエス像を一変させることを迫る衝撃の書である。
目次
1 トマス福音書の背景
2 トマス福音書のイエス語録―翻訳と注解
3 トマス福音書のイエス
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
72
異端とされ、排斥されてきたグノーシス主義ですが、その立場で書かれた著書を読めるのは貴重だと思います。位置付け的には外典ということになるのでしょうか。独自の福音が語られているので、今まで抱いていたイエス像とは異なるイエス像を見たようでした。共観福音書と対比することで、単なる異端の書として終わらせなかったのがいいと思います。専門性が高いので、キリスト教書としては難解かもしれません。2016/12/17
優希
41
再読です。グノーシス主義が本格的立場で論じられているので、新たなイエス像を見ている想いがします。独自の福音書なので位置的には外典というところでしょうか。専門性が高いので難解なのは否めません。何度も読んで理解を深めたいと思います。2023/09/25
bapaksejahtera
13
WW2の混乱期埃及で発見されたパピルス資料中のコプト語福音書の分析書。世界的新約学者が公定福音書を対照しつつ述べる名著。原初の創唱宗教者イエスはユダヤ人同胞に対しアラム語で、ユダヤ教改革を求め説法をした。その語録を纏めて宗教思想を闡明したのが福音書である。トマス書は公定福音書がコイネーギリシャ語で書かれたと異なりイエスの言語に近縁の言語で記される。これが語録原本と擬せられるQ資料に近いと見做される由縁である。本書は初期のユダヤ人キリスト教のグノーシス=覚知主義的性質をよく伝える。4福音書の復習にも有益だ。2022/09/29
武井 康則
12
1945年エジプトで発見された写本に見られる「トマスの福音書」の全容。キリストの死から新約聖書がおおよそ完成する4世紀の間、多くの異端も現れ一時は正統を凌駕するほどのものもあった。そんな様々な考えの入り交じり、やがて統一されていく雰囲気だけでもと読み始めたが、ド素人の手にできるものではなかった。聖書を十分に読み込み、正典を知る者でないと無理です。2021/11/16
記憶喪失した男
10
原始キリスト教について書かれた1984年の東大名誉教授の本。イエスのことばがとても格好良く書いてある。「トマス福音書」は「ナグ・ハマディ文書」で発見されたイエスの語録集である。2018/01/06