内容説明
西洋人でありながら、小泉八雲として日本人以上に日本を愛し理解したラフカディオ・ハーン。本書では多くの資料を駆使して夏目漱石やマーク・トゥエインなどの同時代の作家と比較、また不幸な幼年時代や来日前のアメリカでの新聞記者時代にも光を当てるなど、様々な角度からハーンの全容を分析検証した。今なお日本人の心に生き続ける古びることのない八雲文学の魅力の秘密を、鮮やかに論考した名著。
目次
第1章 小泉八雲の心の眼
第2章 子供を捨てた父―ハーンの民話と漱石の『夢十夜』
第3章 泉の乙女―ハーンの再話文学の秘密
第4章 稲むらの火
第5章 一異端児の霊の世界―来日以前と以後のハーン
第6章 草ひばりの歌―ハーンにおける民俗学と文学
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
№9
20
小泉八雲=ラフカディオ・ハーンが、海外ではことのほか評価されていないというのは目にしたことがあった。日本においてもその評価は分かれるらしい。そんな八雲の残した作品を、その生い立ちや日本に来る前の半生と来てからの半生の出来事などを通して読み解き、「再話文学」とも呼ばれた八雲文学の真髄に迫る。著者の専門である「比較文学」というアプローチから原話とハーンの再話を比較考察しながら、八雲文学の味わいというものを発見させてくれる過程が楽しかった。高名な学者たちの「評価」とは別に今も愛読され続けるその魅力とは何か。名著2013/07/20