内容説明
民主主義が進展し、「群集」が歴史をうごかす時代となった十九世紀末、フランスの社会心理学者ギュスターヴ・ル・ボンは、心理学の視点に立って群集の心理を解明しようと試みた。フランス革命やナポレオンの出現などの史実に基づいて「群集心理」の特徴とその功罪を鋭く分析、付和雷同など未熟な精神に伴う群集の非合理的な行動に警告を発した。今日の社会心理学研究発展への道を開いた古典的名著。
目次
序論 群衆の時代
第1篇 群衆の精神
第2篇 群衆の意見と信念
第3篇 種々な群衆の分類とその解説
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感想・レビュー
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はっせー
100
心理学が好きな人やディストピアが好きな人に読んでほしいほんになっている。この本はヒトラーも読んで参考にしたくらいのものである。これを言うとは一種の権威付けだと思うがそれでもそのぐらい力のある本になる。単純化 反復 断言 どこかで聞いたことがあるようにも感じる。この3つはおそらくこの世の中に溢れている。これが溢れている世の中というだけで危険な気がする。私達は知らずしらずに群衆化しているのかもしれない。そうならないためにも群衆とは一定の距離を持つのがいいのかなって思う!また再読したい!2023/02/25
molysk
83
人間の群衆は、それを構成する各個人とは非常に異なる性質を帯びる。群衆中の個人は、責任観念を消滅させ、暗示にかかりやすくなる。意識的な個性を失い、無意識的な個性が優勢となる。群衆の感情は同一方向に向けられ、単一の集団精神が生まれる。そして、衝動的、盲従的、誇張的、偏狭的といった特徴を持つようになる。群衆の多くは犯罪的集団に堕する、という本書の論調は、フランス革命で民衆がもたらした惨禍を知る筆者には、自然なものであった。一方で、しばしば群衆がみせる英雄的行為についてもまた、議論が求められるであろう。2023/04/08
南北
76
フランス革命などの事例を元に群集心理を解明した本。群衆は衝動的で動揺しやすく昂奮しやすく、心象の形で現れる暗示がかきたてる想像力が原動力になっているとし、こうした群衆に対して指導者は断言・反復・感染によって非合理的な行動をする群衆に暗示をかけることができるとしている。冷静な分析によって群集心理が解明できていて興味深く感じた。群衆がそろって同じ行動を取ることが何より未熟な精神の表れであるという指摘はコロナ禍でのマスクやワクチンに対するある種異常とも思える信頼感を見ても納得できることが多かった。2021/11/23
Gotoran
68
仏革命の残虐行為、ナポレオンの侵略に賛同・協力した群衆を対象に社会心理学的観点から群衆の心理・行動の特徴の解明が試みられる。単独では決してなさない非合理的・衝動的な行動を、集団化した群衆は何故にしてしまうのかが、仏革命やナポレオン戦争、ローマ帝国の政治等を題材にして歴史的・実証的に分析されていく。群衆をコントロールするための対人・言語スキルとして、「断言、反復、感染」が挙げられている。現代にも通じるところがあり、非常に興味深く、示唆に富んでいた。2015/03/28
bookreviews
60
本書は1895年に発刊されていますが、それから100年以上経った現代でも通じる内容です。逆に言うと、人類は技術的には相当進化しているけれど、心理的にはほとんど進歩していないのではないか、と考えてしまいます。 裏を返せば、悪用してはいけないのですが、本書に書かれていることをしっかり理解しておけば、これからの人生で役立つ場面が必ずあるのでは、と思います。 https://bookreviews.hatenadiary.com/entry/PsychologieDesFoules2023/01/07