内容説明
前著『精神としての身体』で、心身二元論では我々が具体的に生きている身体のダイナミックスは捉えられないとした著者は、本書では、皮膚の内にとざされた身体という固定観念を取り払い、身体を超えた錯綜体としての〈身〉を追究。さらに、空間が均質化して「身体は宇宙を内蔵する」という身体と宇宙との幸福な入れ子構造が解体している今日、我々にとってどのようなコスモロジーが可能かを問う。
目次
1 〈身〉の風景
2 〈身〉の構造とその生成モデル
3 生きられる空間
4 錯綜体としての身体
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
24
1984年当時、本書は、身体性を問う哲学的な議論として非常に注目されていたはずです。ですが、今日、我々が読むと、本書の議論には既視感がある印象があります。近年でも、國分功一郎『中動態の哲学』に代表されるように、身体に注目した考察は氾濫しています。東西冷戦の崩壊、経済成長の終焉、高齢化の社会の到来と、「疎外」される事態が起こると、我々個人は「身」を翻して、アイデンティティーを在りかを探します。他方、身体的隠喩の言葉を通じて、共同体的アイデンティティーを模索する試みは、発展したとは言い難い状況です。2018/05/02
どらがあんこ
10
様々な観点から読める身体と空間との関わりという文脈や他者をどのように捉えるか、また理解についても読める。面白いのはそれらの話をただ羅列するのではなく、様々な文脈やレベルを越えて、まさに本書で扱う錯綜体としてのテクストを掲示しているところである。均質化するテクスト空間に異質性を与える風穴のようなそんな本であると思う。もちろん分別的理解も環境へ適応するための自浄作用ではあるのだが、一次元化の危険性も考えないといけない。2018/10/31
Bartleby
4
「身」ということばであらゆるものが説明されつながっていく感覚が読んでいて楽しい。「身」という観点は一つの認識枠としては応用しやすく使いやすいように思う。説明は具体例が豊富なのもイメージがしやすい。「身」の持つ方向性や中心性などが建物や都市の構造とつながっているという指摘や入れ子構造により感じる安心感などについての話は身体と空間の関係を考えていくうえでヒントになりました。2011/08/02
カナトキ
3
I・II章の内容が割と入ってき易かったです。後半になるにつれ著者も言ってますが、応用的な話に進み難しかったです。用具を通した身体図式の延長であったり、自己中心から脱・非中心の過程で自他の視点変換が起こる話などは、私が解釈してきたそれらの考えをより深めてくれるものでした。2016/05/02
yorip
1
身分けは身が身で世界を分節化するということで、身が世界を介して分節化されるということに他ならない。その結果、我々は身知りによって様々な認識のレベルを知ることができる2022/10/17